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カミース
第三章

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 店に行ってだ、二人はお店の親父に言った。
「カミースとね」
「シャルワール、それにクルターとドゥパターも買いたいけれど」
 そうした服もというのだ。
「一式ね」
「あるかしら」
「あるぞ」
 親父は二人ににこにことして答えた。
「全部欲しいんだな」
「セットでね」
「それを何組か欲しいけれど」
「ふむ、では出すから選んでくれるか?」
 カミースやそうした服達をというのだ。
「これからな」
「ええ、それじゃあね」
「出してくれるかしら」
「じゃあ今からな」 
 親父も応えてだ、そのうえで。
 二人の前にだ、スリットの入ったブラウスであるカミースと。
 幅の広いズボンであるシャルワールに上着のクルター、それとそうした衣装に合わせるロングスカーフであるドゥタパーが出された。それぞれかなりあった。
 二人はそれぞれの柄をまず統一して見てだった。
 次に色だった、その色は。
「じゃあ私は赤でね」
「私は青でいくわ」
 こう言うのだった、ズィーナトもタハミーネも。
「柄は薔薇で」
「私はアラベスクでいくわ」
「それで黄色は菱模様」
「緑はストライブでいくわ」
「あとオレンジね」
「水色もいいわね」
「他には」
「あとは」
 二人でだ、それぞれ選んでだった。
 そしてだ、何着かずつセットで選んで親父に言った。
「じゃあこれだけね」
「買わせてもらうわ」
「時間をかけて選んで金もかけてるな」
 親父はその二人ににこにことして応えた。
「いいことだ」
「ええ、結婚前だから」
「これからはカミースばかり着ることになるから」
「それでね」
「買わせてもらったわ」
「それは何より。では結婚したらな」
 その時はともだ、二人は親父に話した。
「そのカミースを着て幸せになるんだぞ」
「絶対にね」
「そうなるわ」
「全てはアッラーの思し召し」
 パキスタン人なので親父もムスリムだ、それでこう言うのだった。
「御前さん達も幸せもな」
「ええ、アッラーがね」
「下さるわね」
「そうだ、だからアッラーに幸せを願うんだ」
 このことも言ってだった、親父は二人から代金を受け取って二人に服を包んだうえで渡した。二人はその服を持って帰路についた。
 そしてだ、その帰り道を歩きながら二人で話した。
「これからずっとカミース着ていくのね」
「そうなるわね」
「結婚してからは」
「その服で生活していくのね」
「そうね、けれどね」
「それでもよね」
「カミースでお洒落はね」 
 それはとだ、ズィーナトはタハミーネに話した。
「必須ね」
「どんな服でもね」
「それは忘れないでいきましょう」
「お互いにね」
 タハミーネもズィーナトに笑顔で応える、そしてだった。
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