第九話:殺戮の天使
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人の精神をガリガリ削る、余りに不快な音が鳴り響き、俺と親父と楓子は一斉に火柱の方を見る。
何が出て来るのか、また出て来るのか? ……そう思う俺の外れて欲しかった期待を裏切り、火柱が生き物か何かのように撓み、悶えるが如く歪み、螺旋を描いて火柱が上がる。
そしてその火柱の頂点に―――五体目が顕現していた。
悪魔の産声と聞き紛わん怪奇音に反し、少女の背中に生えていたのは、白く美しい翼だった。それは先までの少女達の、黒い翼と形こそ似て居れど、正反対の美麗さを持っている。
それはさながら天使と言えよう……つまり、アイツらは堕天使だったのか?
だが、彼女が段々と高度を下げ顔が見える様になった途端、俺は更なる驚愕に見舞われた。
「楓子……だと……?」
その天使はボディスタイルや雰囲気こそ違えど、顔は普段二つに括っている髪を降ろした『楓子』に、冗談なのかと疑うぐらい瓜二つだったのだ。
憶測だけでも答えが出たかと思った矢先、再び詳細不明となった彼女等。八合目に着いたかと思ったら、一合目まで着き落とされた気分だ。
その楓子似の天使はフワリと地面に降り立ち、白い翼を折りたたむと、四体目の時と同じように、しかし確りとした足取りで俺の方へ向かってくる。
先程といい今といい、なんだっていうんだ……? 良く分からん奴に対してのモテ気でも来たって言うのか?
だとしたら笑えないな。全く持って笑えない。
「ウフフ……」
宛ら天使を目の当たりにしたと、『容姿だけ』ならそんな言葉が浮かんでくる。
そう、容姿だけ……。
こいつの纏う雰囲気は、妖艶且つ不気味であり、まるで天使ではなく前の四体―――堕天使だとしか思えない。
親父とはベクトルの違う、また恐ろしい笑顔を、されど何かが ”抜けている” 感じのする笑顔を作ったまま、此方へ向けて歩み来る。
刹那―――ゾクリとした何かが背筋に走ったかと思うと、俺は右手を円を描くように払い、後ろに飛び退いていた。
まだ十歩以上間があった筈なのに、天使は既に俺の元いた地点近くにおり、軽く左手を外側へ向け何やら軽く顔を突き出している。
……唇が僅かに尖っている……何をする気だったか、すぐに分かった。
「何しやがる……?」
「あら、流石ね。でも……キスしてあげようとしたのに下がるなんて、乙女に対しての侮辱じゃあないかしら?」
「……初対面で唇突き出す奴が乙女? ハ、ブラックジョークか」
「ウフ、こんな状況でもこうなんて、益々好きになりそう」
「何やろうとしとったんじゃーーーーっ!!」
右斜め前から怒鳴り声が聞こえた。見ると、楓子が髪の毛を勢いよく振り乱し、ぎゃあ
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