第九話:殺戮の天使
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
がさないだって私の嫁! 私へのプレゼントォォォッ!」
俺は無言で楓子を踏みつけ、右足を引いて蹴っ飛ばす。そして脚を掴むと引き摺るように退散―――しようとして何かに引っかかった。
良く見ると、楓子が玉砂利に指を立て、その下の地面を掴んで必死に食らいついているのが窺えた。
「何してやがる……!」
「逃げない! ハグしたいー! 握手したいー! もう死んでもいいからぁ!」
「馬鹿ぬかすな……!」
「兄ちゃんも一緒に死んでー!」
「お前とだけは絶対に嫌だ」
余りにも気持ち悪い台詞でつい真顔で突っ込んでしまい、手が脚から離れてしまう。しかし、楓子もまた鼻を玉砂利にぶつけ、すぐには動けずにいた。
何時の間にか―――いや、アホらしい漫才モドキを行っていたのだから当たり前か……すぐそこに殺戮の天使が居るのは。
「……」
「チィッ……!」
玉砂利が一本線を引くように掻き分けられており、恐らく鎌がでかすぎて引っ張ってきたのだろうと窺える。
裏を返せば玉砂利『だけ』掻き分けているので、この大鎌を振りまわす膂力はあるのだろう。武器を持っている方が有利なのは言わずもがな、身体能力面でも勝てる見込みは無い。
命乞いをした所ろで助けてもらえるか分からず、寧ろ言葉へ感情をこめ首を垂れる分、次の行動へ移るのが遅くなる。
何より親父が既に、有らん限りの敵意を向けている時点で交渉の余地など、もしかしたら無いのかもしれない。
なら……やるべき事は一つだ。
俺は二歩近寄ると、徐に近付いてきた殺戮の天使の肩を掴む。
「あ……」
殺戮の天使は緊迫した状況に似合わぬ、少し甘美さを感じる声を上げたが、俺は構わず腰へと左手を回す。
「あっ……」
「シッ!!」
右肩と右腰を掴んだその状態から一気に体を駆動させ、足払いと共に左手を引いて右手を押す。呆気なく後頭部から倒れ込む殺戮の天使、その背中へ向けて膝蹴りを放つ。
決まれっ!
「……」
「うぶっ!」
だが蹴りは決まらず、堕天使の羽根を広げられた事で邪魔され、滞空されて追撃もままならない。
ああそうだった、こいつ等は人じゃあ無かったな……クソ……!
このまま空中から遠距離攻撃を仕掛けて来る……かと思いきや、何故か地上へ降りてきた。
【天使の羽衣】とやらは纏っていないのだし、此方の手が届く場所なのでチャンスはチャンスだが、何時鎌を振りまわしてくるか、予測不可能で対処がままならない。
先の一撃の様は不意打ちは、もう利かないと言っていい。
「く……ああっ!」
「!」
それでもやれる事はそれだけしか無い……俺は首を激しく振って
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ