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少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第九話:殺戮の天使
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背には天使モドキを除く前四体と同じような黒い翼に、フィクションでしかお目に掛からないバカデカい鎌。
 青い髪の毛は癖っ毛なのか所々跳ね、項辺りからか尻尾状に一房まとめられている。

 ……そして右手には、朝方の食事の際に見かけたあの分厚いノートが存在していた。


「殺戮の天使……マリシエル……」
「何……!?」


 今不気味な単語を聞いた気がするが、恐らくそれは気のせいでは無い。こんな時にギャグをかます余裕も、必要もまったくないからだ。
 楓子が書きだした設定なのだから、こいつの言っている事が正しいと思って間違いない。

 そうなれば―――もしかすると、こいつが一番のクセモノなのか。


「次は貴様かぁ!」


 親父はそう言って殺戮の天使へ、此方から出もピリピリと感じる殺気をぶつけた。

 思い切り両の拳を振り上げ、重さに任せて一撃を入れようとして―――


「ハウッ!?」


 ボキッ! と嫌な音が腰から響いた。……もしかしなくてもコレは……。


「こ、腰!腰がああああ!?」
「あなた!? あなたしっかりーっ!」


 やっぱり持病のギックリ腰が、此度の戦いで再発したらしかった。
 激しい運動は兎も角、腰を一気に伸ばすのは止めとけと言われたのに……調子に乗って無茶するからだ。
 
 ……が、呑気な事を言っている場合では無い。

 親父の方から目線を外し、殺戮の天使が俺の方を向いたのだ。
 次のターゲットを既に決めていたらしい。


「クッ……」
「……」


 何も出来ないのならここは逃げるしかない。散々心の中で詰って置いて今更だが、親不幸な奴になってしまうだろう。
 ……この親が、簡単にくたばるとも思えないが。


「逃げるぞ」
「……ぅ」


 楓子の方へ視線を向けると、蹲ったまま微動だにしない。怖いのだろうか。
 普段生意気でウザイくらい明るくとも、やはり年端もいかぬ女の子だったと言う事なのだろうか。

 ……いや、ここで普通な行動を取ってくれるなら、普段のあの痴態は阻止できる筈。つまり今うずくまっているのは、多分だが恐怖からでは無い……!


 現に顔を上げた楓子の目は―――ナルトのように渦を巻いていた。


「うぇへへへへへへ、うぇふへへへへへへぇ……」


 完全に眼がイっていた。その上表情は恍惚と蕩けていた。オマケに美少女ぶりを大無しにするぐらい、気色悪さが倍増している。


「もう逃げない、ううん逃がさない……ロザリンド様もキキたんもアイシャ姉様もナーシェたんも……メープル端にまで逃げられたけど、マリスたんだけは逃がさない、逃がしてあげない? ああマリスたん! 愛しのマリスたん! 逃がさないよ逃
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