第九話:殺戮の天使
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りやがって……!
「では、次は此方の番かしら。ククク、参るわねオジさん?」
このままでは親父が危ない。
幾ら教育方法に不満があり、身内として近寄り切れないとは言え、一つ屋根の下で十五年も過ごして来た人を見捨てられるほど、俺も冷血じゃあ無い。
だがどうしろと言うのか……親父ですらかなわないのなら、俺の拳や蹴りなど児戯いかとなってしまう。
それでも駆け寄ろうと体を傾けるが、正に文字通りのピンチな状況だった。
しかし。
「御待ちなさい!」
「ん?」
「おお、優子さん!」
見子服に着替えたお袋が、寸での所で割り込んできた。その一喝にも似た美声により一時戦闘は中断され、お袋へと視線が集まる。
手には親父の持ってきた物と同じ塩袋が抱かれていた。
「これで百人力! 行くぞ!」
「ええ、行くわよあなた……祓い給たまえ!」
お袋の眼が鋭くなり、手の振られたスピードと相反するように、塩が緩やかにまかれた……瞬間、何と驚く事に【天使の羽衣】が瞬いたかと思うと、次いで煙のように消えてしまったのだ。
マジかよ……お袋……。
「そんな……こんな事って……!?」
直撃は流石に洒落にならないと見たか、天使もどきは空中へと舞い上がって、俺達を―――正確には親父とお袋を忌々しそうに睥睨する。
「厄介な奴も来るみたいだし……今日は見逃してあげる」
俺達……俺と楓子の方へは元の顔が楓子の物な所為か、妙に苛立つ流し眼を向け、彼女もまた空の彼方へと飛び去っていった。
結果は何とかなったが……これで良かったとは到底思えない。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ〜〜〜!? メープルたんまでぇーー!?」
「ハッハッハァ! 如何だわしら夫婦の無敵っぷり!」
「格好良かったわ貴方……チュ?」
「ややややややめなさい優子さん子供たちが見ている!?」
剣を突きつけられたにも拘らず、去っていった方がショックらしく泣き崩れる楓子。
自信満々に勝ち誇る親父に、抱きついてキスする何時も通りなお袋。
こいつら……さっき、メープルとかいう天使モドキが言っていた事を、たった数秒でもう忘れてやがるのか?
言っていたろうが、『厄介な奴が来る』と……!
「来たか……!?」
これで本当に最後にして欲しいと願いながら、爆発的に膨れ上がった火柱を見やる。未だ煌々と燃えているそれは、一瞬一回り大きく膨らんだかと思うと逆に一点に収束し、聞いた事のない破裂音を鳴らして消し飛んだ。
後には炎など残っておらず―――1人の少女が佇んでいるだけ。
超がつく程の無表情で、服は上下とも黒尽くめ。
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