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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
もしも 〜 其処に有る危機(3)
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隊も似た様なものだろう。

『A、聞こえるか』
ヘッドセットのイヤホンからBの声が聞こえた。
「聞こえるぞ、B。状況は?」
『いつもと同じだ。変化無し。二人でいちゃ付くわけでもなく普通に歩いているよ。これ、本当に監視する必要が有るのか?』
「文句を言うな、俺達は命令を受けたんだ」
『しかしなあ、相手はヴァレンシュタイン中将だぞ』
イヤホンからは溜息混じりの声が聞こえた。
「B、任務を続行しろ。こちらも後を追う、距離は百だ」
『了解』

Bの気持ちは良く分かる。エーリッヒ・ヴァレンシュタイン中将、宇宙艦隊副司令長官のポストを蹴って士官学校校長になった男だ。能力は有るが野心が有るようには見えない。実際日々の行動でも不審な点は見えない、交友関係も装甲擲弾兵のリューネブルク中将と時々会うくらいのもので極めて綺麗だ。今士官学校は春休みだが中将は毎日学校に来ている。士官学校校長など閑職なのだ、多少サボっても問題無い筈だが律儀に就業時間は学校に居る。

百メートル離れた、そろそろと地上車を動かす。ヘルトリング部長が何を考えて俺達に中将を監視させているのかさっぱり分からない。或いはヴァレンシュタイン中将本人よりも中将に接触しようとする人間を押さえ様としているのかとも思うのだが……。一度別なチームが中将が若い女性と食事をする場を目撃した。動きが有ったと意気込んで本部に写真を送ったのだが本部からの回答は相手の女性は宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥の養女との事だった……。笑い話にもならん。それにしても俺だったらどんなに美人でもあの元帥の娘なんかと食事をするのは御免だな。

『A、見えているか?』
「見えている、中将は自宅に入ったようだな」
『ああ、副官は自宅に向かったようだ』
「分かった、地上車を止める。戻ってこい」
『了解』
地上車を中将の官舎から五十メートル程の距離に止めた。Bが少しずつ近付いて来る、そして助手席に座った。俺もヘッドセットを外した。

「こちらA、本部、応答願います」
『こちら本部』
「1755、監視対象者は家に戻った。このまま監視を続ける」
『了解』
Bに視線を向けると肩を竦める仕草をした。今日はこのまま明日の五時まで待機だろう。それまでに食事を摂りBと交代で睡眠を取る事になる。詰まらない一日だ。

三十分程経った時、中将の官舎の前に地上車が止まった。車内の空気が強張る。地上車からは誰も出てこない。Bが単眼鏡を構えた。
「B、中に人が乗っているか」
「いや、見えない。スモークガラスを使っているな」
Bの声が昂っている。ただの平民、下級貴族がスモークガラスを使用した地上車に乗る事は許されない。中に乗っている人間が居るとすればそれなりの地位を持つ人物だ。貴族、将官、高級官僚、或いは中将が地上車
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