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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
もしも 〜 其処に有る危機(2)
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「十分有り得ると思う、司令長官は如何思われる」
シュタインホフ元帥が話を振るとミュッケンベルガー元帥が重々しく頷いた。
「私も統帥本部総長と同意見だ。外から攻めて駄目となればいずれは内から攻めてみようと考えるだろう。今この時にも考えているやもしれぬ。それにイゼルローンは駐留艦隊と要塞は指揮系統が統一されていない。付け込む隙は有ると言える。成功の可能性も十分に有るだろう」

指揮系統が統一されていないという部分で二人の顔が不機嫌そうに歪んだ。多分、クライストとヴァルテンベルクの事を考えたのだろう。
「では帝国軍三長官からの警告としてイゼルローン要塞司令官、駐留艦隊司令官に対してこの作戦案を伝える事としたい」
二人が頷いた。

「更に駐留艦隊司令官に対しては反乱軍の姿が見えぬうちはむやみに出撃せぬ事を注意し要塞司令官に対しては例え帝国軍艦船、帝国軍将校に見えても外部からの入港者に対しては油断するなと注意したい」
また二人が頷いた。取り敢えずこれで簡単な方は片付いた。ここからが今日の本題だ。

「ではヴァレンシュタインが提起したもう一つの作戦案について意見を聞きたい。シュタインホフ元帥、ミュッケンベルガー元帥、卿らは如何思われる」
「正気とは思えぬ」
シュタインホフ元帥が吐き捨てミュッケンベルガー元帥が頷いた。

「そんな事は分かっている」
「……」
「大将昇進、宇宙艦隊副司令長官への異動を断ったのだからな。正気では有るまい、違うかな?」
二人が渋々頷いた。
「私が卿らに問いたいのは反乱軍が要塞をもってイゼルローン要塞を破壊しようとした時、この馬鹿げた作戦案を実施した時、帝国軍にそれを防ぐ方法が有るかという事だ」

二人が沈黙した。ややあってミュッケンベルガー元帥が大きく息を吐いた。
「分からぬ。……だがこれは可能なのか? イゼルローン要塞と同規模の要塞を運ぶなど」
「理論上は可能だろう、ワープ航法は既に確立された技術だ。要塞を運ぶなど突拍子もない案だが運ぶ物が大きくなっただけとも言える。不可能とは言えまい」
私が答えると二人がまた沈黙した。

「念のためシャフト技術大将に要塞を運ぶ事が可能か訊いてみた、雑談としてな」
「それでシャフトは何と?」
シュタインホフ元帥が問いミュッケンベルガー元帥が身を乗り出した。
「同じだ、理論上は可能だと言った」
「理論上は可能でも現実に可能なのか?」
今度はシュタインホフ元帥も身を乗り出してきた。

「多分可能だろうと言っている」
「多分?」
「もし不可能だとしてもそれは現時点での科学技術で解決出来ぬ問題が有るというにすぎぬ。今後科学技術が発展すれば解消されるだろうという事だ」
「……」
「つまり今は不可能でも十年後、二十年後、いや、一年後には可能となる
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