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女人画
2部分:第二章
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た。それではその奈良市に行きますので」
「御願いしますね」
 こうして依頼は届けられたのだった。こうして役はすぐに奈良市に向かった。助手の相模逸郎も一緒である。二人は京都で探偵事務所をしているのだ。
「奈良市ですか」
「そうだ。奈良市ははじめてだったか?」
「そういえばそうですね」
 逞しい顔立ちで髪を短く刈った黒い皮ジャンのその若者が間の言葉に応えていた。
「学生時代は来たことがありますけれど」
 そんな話を二人の事務所がある京都から奈良に向かう電車の中で話をしていた。京都駅から近鉄で特急に向かい合って座りながら話をしている。
「こうしたことで行くのは」
「私もそうだな」
「役さんもですか」
「奈良は土蜘蛛が有名だが」
「ええ」 
 文字通り巨大な蜘蛛の妖怪である。源頼光と戦ったことでも有名だ。
「それでも妖怪変化の類は案外少ない」
「京都に集まっていますからね」
「京都はまた特別だ」
 車窓から見える景色を眺めつつ述べる。席はゆったりとしていてそこから穏やかな面持ちで外を見続けている。
「またな」
「そうですね。あそこは人の心が複雑に蠢いてきていますから」
「妖かしの者達はそうした場所にこそ集まる」
 緑の田や家々が見えるその景色を眺めつつ言う間だった。

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