暁 〜小説投稿サイト〜
女人画
1部分:第一章
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い」
「ですがそれにより」
 ここで一気に雰囲気が怪しいものになるのだった。話す方も聞く方もその怪しさの中に何もかも浸したようになって話を続けるのだった。
「多くの人が消えているのです」
「それでですか」
「具体的に言えば一人描くことにより一人」
「一人ですか」
「そう。一人ずつ消えていっているのです」
 こう述べられるのであった。
「それが遂に三桁にまで達しようとしていまして」
「不思議ですね」
 話を聞く方はその話を聞いてこう述べざるを得なかった。
「まるで何かの怪奇話を聞いているようです」
「ですが本当のことなのです」
 今の言葉は普通なら冗談として退けられるようなものであった。しかし今は違っていた。やはり白と黒の中で語られ続けるのであった。
「このことは」
「一作描くことに一人ですか」
「しかも絵を描いている途中に消えるのではありません」
 ここでまた一つ不可思議なことが話された。
「若しそうであればすぐに大島氏に疑惑がかかるでしょう」
「そうですね」
 これはもう言うまでもないことであったので聞く方もすぐに頷いた。
「画伯の家やアトリエで姿を消したならば怪しいどころではありませんから」
「そうです。しかし不可思議なことに」
「どのようにして消えていったのですか?」
「それはまちまちです」
 話す方の声の調子が深刻さを増してきた。
「実に色々です」
「色々ですか」
「自宅で消えることもあれば」
「それもまた随分と奇怪ですね」
「街を歩いていて急に消えることもありました」
「ほう」
 今の話には聞く方も声をあげずにはいられなかった。

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