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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
対峙
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の位置を探り、あらかじめ《種》を仕込んでいたものを散発的に送り込んでその場に釘付けにする。そして二度目――――三十分のスキャンによって、自らの《声》が正確に届けられる媒体となりうる《死体》が標的(レン)の近くにいることを確認し、満を持してコンタクトを取った。

だが、懸念はまだある。

大きなところで言えば、なぜユウキがここにいるか、である。もっと言えば、自分の脚より早く。

確かにレンは道中、フェイバルが繰る《死体》の迎撃を受けた。その対応に時間が割かれたのは言うまでもない。しかし、それではどうして同じ頃に行動を開始したと見えるユウキは迎撃を受けていないのか。

持ち前のほぼ全ての心意を使い、荒れ狂う暴風雨もただのつむじ風に見える少年は、その動きに反して冷静な心の中で思う。

いや、それは予感だ。

幾多の、吐き捨てるほどの死地の中で少しずつ砥がれてきた本能が、見えない敵の真意に警鐘を鳴らしている。

―――なんだ!?何がそんなに怖い!?

怯えが怖れを呼び、得体の知れない怖れは混乱を呼ぶ。

そんな少年に、心の底から楽しそうで《無邪気》な声がかけられた。

「あははっ!すごいすごい!ここまで……ここまで一気に目覚めるのか!!」

フェイバルはその時、ほぼゼロ距離にてレンと打ち合っていた猛攻を無造作に解いた。

まるで、抑えきれない歓喜の念を少しでも表に出したいように。

その隙を、《冥王》は如何なく埋めた。

ゴッッ!!!

空気が圧迫される音とともに、黄色に彩られる体躯に無数の拳撃が突き刺さった。

収まりきらなかった衝撃は、アバターを抜け、ストリートの突き当りにそびえるビルの基部を軽く粉砕する。

――――だが。

「う……そ…………」

無傷。

そんな結果を直接視認するよりも早く、突き刺さる拳から返される感触によってレンは絶句した。

分厚い核シェルターの扉でも殴りつけたかのような。衝撃が百パーセント返され、手首の辺りから嫌な音とともに握った指の合間から間欠泉のように血霧が噴き出す。

ただ、そんな攻撃にも意味はあったかもしれない。

いまだに絶えない少年の過剰光の向こうに佇むアバターの顔をすっぽりと覆うガスマスクの表面にピシリとヒビが入り、次いで豪快に砕け散った。

その向こうにあったのは、別にバケモノの顔とかではない。普通の――――少女の顔だった。

端正でいまだ幼さをおぼろげに残した瞳には、無色透明な液体が並々と盛り上がり、白い肌を伝っている。

ほっそりとしたアゴから静かに滴り落ちる涙を見た時、確かに少年の動きは止まった。

時を止めた少年に、静かに手はかざされる。

「《茨蔦の戒め(ソーン・アイヴィー)》」

ゴボリ、と
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