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少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
A.G.E(アンジェ)
第七話:混沌の訪れ
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るう事になる為、いっその事すっぱり諦めて欲しい。アイツに懸想(けそう)した所で実らない上、よしんば奇跡が起こったとしても付いて行けなくなる事は明白なのだから。


「『楓子ちゃんをモノにしたい!』……なら告白でもしろ。『楓子さんが麗しい!』……容姿だけはな。『超絶愛してる、楓子様!!』……遂に “様” まで来たか……末期だな」


 一々ツッコンでいる理由は簡単で、清めの炎と言う名の焚火の中へと、黙々とくべるだけなのも暇だからだ。
 五つに一つは楓子へのラブコールが混ざっている。
 五回に一回俺の眉がひそめられる。


 ……毎回思うのだが、何故こいつ等はその楓子のいる実家の神社にこんな物を飾るのだろうか。
 そしてデカデカと『楓子』と書かれている文字を見るに、書いた者はそれなりにアグレッシブのかもしれないが、こんな事をするぐらいならラブレターの一つでも送れというものだ。

 受身なのかそうでは無いのかよく分からない。そして、そんな絵馬がわんさとある現状……世の中が理解できなくなってくる。


 そもそも、うちの神社が祀っているのは『戦いの神』であり、『縁結びの神』ではない。即ち恋愛成就祈願の為にここへ通うのは、まるっきり見当違いだ。


 ……焚火の中で燃えていく絵馬を見ながら、今日は風も強くないので放っておいて良かろうと背を向け、俺は朝の日課を終えて家へ向けて歩みを進めた。





 そちらの方が近い為、家の裏口から入ってみれば、良い匂いが鼻へと届いてくるが、食欲は全く刺激されない。
 その食事は俺にとって、香り『だけ』がよい代物だと理解しているからだ。
 栄養にはなるが食べても不味いだけで、日々の楽しみがごっそり削られている……そう言っても過言ではない。

 双方にとって酷い言い方にもなるが、病院食の方が幾分かマシと言うものだ。……いや、今の俺にとっては、その病院食でも不味かろうが。


 食堂も兼ねている台所―――ダイニングキッチンへと足を運べば、八人がけのテーブルの中央近くに、羆とも見紛わん親父・吉岡京平が座って新聞を読んでいた。


 うちは洋風では無く和風な家なのでテーブルは座卓、椅子も旅館で見かける様なモノが置かれている。


「ただいま」
「おう麟斗。朝のお勤め、御苦労」


 新聞を畳んで此方の労をねぎらう言葉を掛けるが、その声には幾分かドスが効いている。こんな所でも人を脅さねば気が済まないらしい。
 尤も、どすが効いている理由は俺を脅すためではない、他にあった。


 今ダイニングキッチンに居るのは、俺と親父とお袋のみ。つまり楓子が居ない。

 楓子は夏休みだからかまだ起きてきてはおらず、彼女には日課こそないものの、『食事は一家揃って』
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