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必死にやれば
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第一章

                    必死にやれば
 鼠のコロ助はとてもやんちゃでした。とにかくいつも何かしていないと気が済まない、活発なのはいいのですけれど困ったところもある子供でした。
 けれど何処か臆病で。怖いこと、自分ができそうにもないことはしないのでした。
「それはいいよ」
「僕やらないから」
 いつもこう言ってそういったことはしません。それでやんちゃなのはやんちゃでも何処か怖がりの、そういった子供になってしまったのです。
「お父さん、コロ助だけれど」
 お母さんはある日そんな息子を心配してお父さんに相談しました。
「相変わらず。怖がりで自分のできそうにもないことは」
「しないんだね」
「ええ、そうなの」
 こうお家で話すのでした。お家は穴の中にあって土のところに色々な家財道具が置かれています。鼠の小さな家財道具です。テレビも箪笥も何もかも。とても小さいです。
「特にね。泳ぐのは」
「しないんだ」
「何があっても絶対に泳ごうとしないのよ」
 心配そのものの顔でお父さんに話します。お母さんは手に持っている鼠用のとても小さなカップの中のミルクも全然飲んでいませんでした。それだけ子供のことが心配なのです。
「どうしたものかしら」
「特に泳ぐことがか」
「泳げないとやっぱり」
 お母さんの心配そのものの顔はさらに困ったものになります。それを見てもお母さんがコロ助のことをどれだけ心配しているかわかります。
「若し猫に会った時に」
「猫に会った時は小さい道に逃げ込むか泳いで逃げるのが一番だよ」
「そうよね。だからね」
「泳げないと困る」
 こう言い切るお父さんでした。
「何があっても」
「そうよね。けれど」
「ここは思い切ったことをやるしかないかな」
 お父さんは腕を組んで困った顔で呟きました。
「ここは」
「思い切ったこと?」
「そうだね。ここはね」
 またお母さんに言いました。
「思い切ったことをしてみよう」
「思い切ったことって」
「明日。コロ助を呼んでくれないか」
「コロ助を?」
「明日はお休みだしね」
 お父さんも会社に行きますしコロ助は学校に通っています。鼠の社会にも会社や学校といったものがあるのです。その辺りは人間と同じです。

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