暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第196話 其々の告白
[4/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だけじゃない。……今までの人生の中で、他人と関わった時に向けられていたどの視線とも違う。……純粋に、自分自身をみてくれている眼だった。

 だけど、それを理解した瞬間、凍った心の奥底に押さえつけられていた激情が、一気に吹き荒れた。軋む程に、歯を食いしばり、もう片方の手で、リュウキの襟首を掴みかかった。

「なら………」

 慰撫を求める、心の安寧を求める弱さと、破滅を求める衝動が、今だかつて、誰に対しても言っていない激情をそのままに、リュウキにぶつけた。その眼から迸る燃え上がる様な視線を、リュウキの赤く、温かい目にぶつけ、そして叫んだ。


「――なら、あなたが私を一生守ってよ!! 何も知らないくせに……何もできないくせに、勝手な事言わないで、こ、これは私だけの戦いなのよ!! ……たとえ、負けても、死んでも、誰にも私を責める権利なんかない! それとも……」


 更に、シノンはリュウキに近づいた。その銀色に輝く前髪が自身薄いブルーの前髪と接触するほどの距離。


「あなたが、一緒に背負ってくれるの!? この……」


 握り締めた右手を、シノンはリュウキの目の前につきだした。それはかつて、血に塗れた拳銃のトリガーを引き、1人の人間の命を奪った手。……肌を詳細に調べれば、火薬の微粒子が侵入して出来た黒子が今でも残る手。……罪人の手。


「この、ひ……人殺しの手を……! あなたが握ってくれるのっ!」


 記憶の奥底から、詩乃を罵るいくつもの声が蘇ってきた。
 子供は……、時に残酷だ。教室でうっかりと、他の生徒の持ちものに手を触れようモノなら、こう言われ続けたんだ。


『触んなよヒトゴロシが! 血がつくじゃないか!』


 そう、罵られ、足を蹴られ、そして背中を押された。

 あの事件ご、シノンは、詩乃は自ら誰かに触れた事はない。……ただの一度たりとも、無いのだ。

 シノンは、突き出した右手を見て……、ぎゅっと眼を瞑った。その手を見たら、あの銃が……黒星現れ、あの男も現れ、自分の心を砕こうとする。リュウキがいた筈なのに、あの男が目の前にまで迫ってくる。赤い血の涙を流し、ニタリ、と笑った。死を求めている様な目をして。

 そんな時だった。

 闇を払うように、男の身体を蹴散らす様に、すっと、光が伸びてきた。



「……幾らでも握ってやる」



 眼前の男は完全に消滅し、ただ……、固く握り締めていた右手。その手を拳の上から握った。

「っ!!」

 シノンは、状況を理解するのに、時間が掛かった。
 ただ、すぐに判ったのはあの男が消え去ったと言う事と……そして、またあの温もりを感じる事が出来た事だ。

「手なんか、幾らでも、握ってやる! 手は、握る為に
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ