序章2 ユン・ガソルの王
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直後、体を内側から抉るような鋭い痛みが走り、声にならない叫びをあげてしまう。驚きを顔にこそ出さなかったが、此れでは動揺していると言っているようなものであった。
「ッ?!」
「ああ、待て待て。お前さんかなりの重傷だからな、そのまま動くな」
そんな此方の様子をさも可笑しそうな響きを滲ませつつ、そう言いながらこちらが相手の顔を見て話せるように声の主は場所を移した。
「貴方は……ギュランドロス・ヴァスガン、か」
「ほう? 俺の顔を知っていたのか、なら話は早いな」
その顔を見て、先ほどとは別の意味で驚く。赤い鎧に、赤い外套。炎のように猛髪。そして豪快な笑みを浮かべた男。ギュランドロス・ヴァスガンであった。内心で驚き、表情に出すまいとするも、動揺して怪我の事を考慮せず動いてしまい、痛みに声にならない声を上げてしまった。そんな俺の様子に、声の主であり、敵の総大将であるギュランドロスはにかっと嬉しそうな笑みを浮かべている。王でありながら、どこか少年のような笑みであった。
見間違う筈など無い。ギュランドロスは今でこそ敵国の総大将と言う立場であるが、それ以上にユン・ガソル連合国の王であったため、仕官する前に諸国を見聞していた時に顔を覚えていたのだ。
さらに言えば、戦場で将と言うのは兵士の中心にいることが殆どで、部隊の指揮をしていたりするため顔を知らなくとも大体わかるものなのだが、将の顔は覚えておいて損は無い。総大将となればなおさらだろう。何より、一度だけだがその首に手が届く距離まで肉薄したこともあった。それ故、目の前にいる人物が敵国の王だと言う事が理解できた。
「問いたいことは多々ありますが、今は一つだけ聞かせてもらっても構いませんか?」
「ああ良いぞ。言ってみな」
「では。放って置けば死ぬ私を助けた意味が解りません。何を企んでいるのかお聞きしたい」
現状では駆け引きなどするだけ無駄である。自身は死んでいないだけで動く事すらまともにできず、生かされているだけなのだ。目の前の男の気分次第で成す術もなく殺されるだろう。ならば、交渉の余地もない。殺されるにしても、せめて死に際の疑問ぐらいは解消しておきたいと思った。思えば、雨の中で倒れ伏していた時、自分は既に死んでいたのかもしれない。
「くく、随分と単刀直入に来るな」
「こんな状態では駆け引きをする余地もありませんからね。私が生きるも死ぬも貴方次第。つまり、私は貴方に従わざる得ない。ならば、駆け引きなどするだけ時間の無駄と言う訳です」
そんな俺の返答が余程面白かったのか、ギュランドロスは少年のように屈託なく笑った。裏表のないように思えるソレは、こんな状態でなければ主君と定めていたかもしれないほどに惹かれる何かを感じた。ある種の、器と言うモノだろうか。ギ
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