序章1 敗戦
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も良い状況だったのだ。
そんな事を、5度繰り返した。ほとんどの麾下は討ち取られ、自身も無数の切り傷を体に受け、満身創痍と言った感じであった。だが、死してはいない。だから、意地は張れた。
「かなり、時間は稼げましたね。何とか本体が逃げ切れていると良いですが、此方は終わりですね。とは言え、将軍と共に逝けるのならば、それはそれで良い、と言う気はします」
生き残っている麾下の一人が言った。他の者たちも、一様に皆頷いている。完敗を惨敗に変えることができた。皆、そんな思いを持っていたのかもしれない。
「もう良い。お前たちは脱出すると良い。このようなところで死ぬ事は無いだろう。既に逃げ切れるかも怪しいが、行くと良い」
静かにそう告げる。ここまで部下を死なしておきながら、できるならば生きていてほしい。そう思った。
「断らせていただきます。我らは、あなたの部下なのですから」
そんな私を知ってか知らずか、麾下の一人が可笑しそうな笑みを浮かべ、言った。見れば、他の者たちも、笑っていた。物好きの集まりだった。
「……馬鹿どもが」
「仕方がありません。貴方に鍛えられたのです」
呟く。また、面白そうに答えられた。堪え切れず、自分もまた笑ってしまった。ある程度笑ったところで、声をかけた。
「もう良い。ならば付き合ってもらおう」
「はっ」
良い部下を持った。心から、そう思う。それを死なせるのは心苦しいが、嬉しくもあった。
前にも後ろにも死しかなかった。だが、駆ける。皆、それしかなかった。それで、良かったとも思う。一丸となって、ただ駆ける。一人でも多く倒し、意地を貫こう。そう、思い、天に向かい気勢を上げた。
不意に、頬に冷たいモノが当たった。雨が降ろうとしていた。
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