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竜騎を駆る者
序章1 敗戦
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「ぐあぁぁぁ!」
「こんな……ところでぇ」

 一言で言うならば、悪夢だった。つい先ほどまで快勝に酔っていた軍が奇襲をされ、今は完全に潰走に追い込まれている。ノイアス元帥に、奇襲の兆候があり、警戒するように促したのだが、聞く耳持たれなかったのである。それ故、奇襲は成功されてしまった。
 周りのどこを見ても、兵が恐慌状態に陥り、阿鼻叫喚と言った様相を呈している。麾下すらも、相当数討たれたと思っていいだろう。小憎たらしいほど鮮やかに、ユン・ガソルの奇襲が成功していたのだ。

「……」

 一人、また一人と兵が討ち取られていく様子を見詰める。これが、ユン・ガソルの力か。これが、三銃士の力か。その鮮やかな手並みに、不覚にも驚嘆してしまっていた。
 ここまで来ると、もはや戦ではなかった。ただ、討たれているのである。将の指揮もなく、まとまって動くことのできない兵士たちは次々にうたれている。戦と言うよりは、虐殺のようなものであった。
 気付けば左手から血が流れていた。強く、呆れるほど強く拳を握っていた。怪我をしているというのに、痛みがまるでしない。どこかおかしくなったのかもしれない。そう、思った。左手に持つ剣を天に掲げ、右手に持つ槍を体に水平に構えた。それだけで、麾下は迷わずこちらに集まり防戦の構えを見せる。だが、思ったより数は集まらない。半数程度だろうか。数刻前に共に駆けた者たちの顔が、大きく欠けていた。

「一度死地を抜け、その後、断ち割る」

 麾下に向かって告げた。「応」っと雄叫びが上がった。周りを見る。味方は殆どが打たれ潰走しており、敵ばかりであった。面白い。そう、思った。この状況を作り出したのは、ノイアス元帥に意見を押し通せなかった自分と、自分の意見に賛同した将兵が力不足だったからだ。ならば、この状況を覆す事こそが、我らの役目と言えた。

「原野を駆ける我らが意思に、竜をも破る峻烈なる加護を」

 左手に持つ、剣に魔力を込め、魔法を発動させた。麾下全体が速く、そして鋭くなったのを感じる。一度だけのぶつかり合いならば、敗北は無い。そう思わせるだけ、部隊の気が満ちているのを感じた。
 邪魔な敵兵を薙ぎ払った。何度となく、敵を切り伏せ、少しずつ駆けた。多勢に無勢。ここの力は決して負けないと自負しているが、それでも彼我の兵力差があり過ぎた。一人二人と、此方の騎兵も崩れ去る。歯を食いしばり、ただ進んだ。
 やがて、囲いを抜けた。そのまま駆け続け、勢いを作ると、馬首を返し敵陣に向かい疾駆する。槍が腹を突くように、鋭く敵軍を突き崩した。そのまま駆け抜け、突破する。周りを見た。減っていた麾下が、更に少なくなっている。顧みず、もう一度駆ける。僅かでも時間を稼ぐ。それが自分と自分の隊にできる事だった。既に、敵の中に孤立していると言って
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