序章1 敗戦
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兵士と比べて、より強力であり、周りに比べて陣が乱れているという様子もほとんど見られなかった。つまりは、指揮が正常だと言う事であった。そして何より、俺たちと同じ、騎馬隊だった。ここだ。そう、確信した。一直線にその部隊に向けて、駆けた。数舜後、ぶつかり合った。疾駆している騎馬隊と、陣容の中にあり、満足に駆ける事ができない騎馬隊。勝負になる筈はなかった。陣を真っ二つに突き破り、進んだ。そして、ようやく見えた。赤い鎧に、赤い外套。敵方総大将にして、ユン・ガソル連合国の王、ギュランドロス・ヴァスガンだった。此方に気付いたようである。数舜、目が合った。
「その首、貰い受ける」
気が付けば、叫んでいた。何も言わずに仕掛ける方が無駄な力を使わずに済むのだが、叫んでいたのだ。理屈では無く、感情の高ぶりからきた行為な為、意図せずに叫んでいたのだ。
「ッ!? ギュランドロス様!」
数歩で、ぶつかる。そこまで来たとき、側面から、恐ろしいほどの殺意を感じた。恐怖はない、とは言わない。だが、止まる訳にはいかなかった。目と鼻の先に、敵総大将が居るのだ。この機を逃す事はできなかった。
それ故、正面だけを見据え、上体をぎりぎりまで馬首に近付け、咄嗟に姿勢を低く保った。機を逃す事は論外だが、だからと言って捨て置くこともできなかったのだ。結果として槍を振り抜くには無理な態勢のまま、突き出した。金属にぶつかる鈍い手ごたえを感じた。同時に、手綱を持つ左腕の辺りに、鋭い痛みが走った。僅かにだが、斬られたようだ。しかし、動くことに支障は感じられない。
気にせずそのまま、ギュランドロスの部隊を切り裂き突き進んだ。討ち果たせたか、確認はできなかった。ただ、手には鈍い感触が残っただけであり、手応えとしては微妙なところであった。貫いたと言うよりは、弾かれたという感覚だったのだ。討ち取ったと確信はできなかった。だが、敵陣営を真っ二つに割り、本陣を強襲したことで敵軍全体を混乱させる事には成功した。それだけでも充分すぎる戦果であったではないか。そう思い、無理やり納得した。戦場では、全てが思い通りに行くことなどありはしないのである。
やがて敵陣を抜け、視界が大きく開けた。後方から怒声が聞こえた。恐らく、両軍がぶつかったのだろう。戦況は確認するまでもなかった。激突直前に指揮系統を乱したのである。勝負になる筈がない。ある程度直進したところで反転した。予想通り、ユン・ガソル軍は敗走しはじめていた。それを見て、追撃しようかと考える。麾下からは、どうか追撃をっ、と言う声が上がっていた。
「いや、このまま帰還する」
だが、そのまま兵を下げる事にした。無理に追撃に参加せずとも敵本陣を貫いたのである。我が軍の功は誰の目にも明らかだったのである。だからこそ、欲をだし、兵を無駄
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