序章1 敗戦
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、此処で死ぬのか。そんな事を思いながら、戦場の風景を眺めた。
思えば、何もできなかった。できる、と言う自信はあった。今も無くしてはいない。相手の狙いは読めていたのだ。だからこそ、悔いだけが募る。
だが、そんな自身の意思とは異なり、何かを成す機会が訪れる前に、この身は力尽きる運命だったのだろう。ならば、終わりもそれ相応のモノでしかない。そう思った。悔いがないとは言わないが、もはや自分ではどうしようもなかった。意識を失うその時まで、ただただ雨の音に耳を傾ける。それも悪くは無い。そう思い、瞳を閉じた。
騎馬が駆けはじめた。ゆっくりと、そして次第に早く風を切り、進む。頬を、手を、全身を、風が撫でる。血潮が滾り、気分が高揚した。一度、右手に持つ槍を握りなおす。腰には、魔法の力を帯びた剣を佩いているが、馬上では槍の方が使い勝手が良かった。左手で剣の柄を撫で、その力を確かめる。何もせずとも魔法の加護を感じさせるソレは、自分には過ぎた一振りだった。
そのまま、左手を柄から離し、槍を体に対して水平に構えた。それだけで、麾下である騎馬隊が二列縦隊になった。麾下は精鋭であった。だからこそ、二人一組で死角を補いかつ小さく纏まることで、弓兵や魔法兵などといった遠距離攻撃のできる兵による被害を最小限にとどめ、より敵陣を突破することに力を入れられる構えだった。これは率いる兵が弱兵ではできない構えだ。ノイアス元帥に仕え、唯一つ与えられたのが、この騎馬隊であった。それを自分が心血を注いで鍛え上げたのである。精鋭でないはずがなかった。
「穿つぞ」
声に出した。一気に丘を駆け下りる。眼前には敵の兵が此方の軍とぶつかり合おうとしていた。その横腹を目掛け、一気に駆け抜けた。遅れて、麾下たちの雄叫びが響き渡る。領土に攻め込まれていた。それ故地の利はこちらに在り、兵を見つからずに伏せていたのだ。敵軍の虚を突いた、逆落とし。突如現れた騎馬隊に敵軍が浮足立った。正面から我が軍の本体とぶつかり合う直前、その間隙をついたため、敵の陣容を崩すのは容易だった。二列縦隊の麾下を指揮し、唯敵陣を駆け抜けた。騎馬隊の正面にいる者たちはその圧力に押され、指揮が乱れていたため、兵は一目散に脇に逃れようとする。その隙をつく事であっけない程に討ち破るのは容易だった。
「この程度か?」
そんな事を思い、風を身に受けつつ、進んだ。小隊の指揮官らしき者を、数人突き落としながら駆ける。目的は、雑兵を破る事ではなかった。小隊などでは無く、軍の指揮官の首を挙げる事である。事前に丘の上から、敵指揮官らしきものの位置を確認していたため、そこを目掛け、ただ苛烈なまでに駆け続ける。
「見つけた」
やがて辺りにいる兵士とは明らかに動きの違う部隊を見つけた。装備は他の
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