暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第194話 ただ1つの選択
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いてこなくなる。

 再三と、トリガーを絞ろうと指を動かすが、やはりどうしても残り数mmが埋められない。まるで、へカートが……、長く連れ添ってきた相棒が自分を拒絶しているかのようだった。


 だが、それが違う事には直ぐに気づく。へカートが拒絶をしているのではなく、自分自身が拒絶をしているのだと言う事に。


――強い意志を持った者に相応しい。


 かつて、そう言われた。……だが、今の自分はそれとは程遠く、弱々しい。強さなど欠片も無くなっている。

 スコープを覗く前には、少しの力が戻ってきた、と思ったのに。


「……撃てない」

 詩乃、シノンはそう呟いた。

「撃てないの。……指が動かない。私……もう、戦えない」

 言葉こそ、上手く発せられる様になったのだが、心と身体がまるでついて来なかったのだ。それが、指先に顕著に現れている。だが、キリトは。

「いや、撃てる!!」

 即座に強く、厳しくシノンの背中に打ち据えた。

「戦えない人間なんかいない! 戦うか、戦わないか、その選択があるだけだ! あいつだって、絶対にそう言う! 最後の最後まで、絶対に諦めない!」

 ライバルに、そう言われた。そして、ここにはいない、今も自分を庇って戦ってくれている彼の事を考えると……キリトの言葉が真実だと思えた。だが、それでもシノンの心の火は僅かに揺らいだだけだった。


――私は、戦わない方を選ぶ


 もう辛い思いはしたくない。戦った事で、温かさを知れた。……だけど、それを覆い尽くすかの様に心が蝕まれたんだ。そして、何より……あの男は自分自身の罪。


――だから、自分に温りを求める権利なんか無い。このまま……。


 シノンの視界が再び黒く染まろうとしていたその時だ。

『心に巣食った痛みは、簡単に取れるモノじゃない』

 再び、光が差した。なぜ、今あの光が……? あの声が響いてくるのだろうか。それが……判らなかった。

「!!」

 キリトは何かに気づいた様だ。

「シノンっ!! 掴まれっ!!」

 ハンドルを思い切りきると、メインストリートの右車線に飛び込んだ。そちら側は、廃車が多く、障害物となっており、走行が非常に困難となっている。シノンもそれに気づき、なぜ?  と思っていたその時!

 黄金色の空がメインストリートを照らしていたが、影が映ったのだ。

 その影は見る見る内に大きくなり……そして丁度、キリトが走っていた場所に、がしゃんっ!! と言う音と共に着地した。それは、自分達が乗っている三輪バギーだ。


「遅い、遅刻だぞ!? リュウキ!!」


 キリトは、その姿を見ながら 大きな声でそういった。

「それは、お互い様だ
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