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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第194話 ただ1つの選択
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回す男。
 母親を、守らないといけないのに、どうしても動けない自分。あの時は、動けた。……銃を奪い、そして母親を守る事が出来たのに、まるで動けないのだ。


――ど、どうして。


 詩乃は、困惑をしていた。
 なぜ、動けないのか。このままでは、大好きな母が撃たれてしまう。それでも、まるで動く事を身体が拒絶をしているかの様に、動けない。

『あの時――……』

 先ほどまで、銀行員相手に喚いていた男の声が、突如ピタリと止まった。ゆっくり、ゆっくり、まるで 幽霊とも思える様な動きで、身体は向こう側、銀行の受付側に向いていると言うのに、首だけが180度回転し、ぎょろりと、その悪夢の眼を向けて、その下の乾いた口元で呟く。

『あの時は、よくも撃ってくれたなぁ……?』


――ひっ


 詩乃は戦慄した。
 男が言っている意味が、判らない。……幼き日の自分には判らないのだ。男の狂気は、そのまま不自然に歪んだ身体の右腕、銃を持っている手に宿り……そのまま銃口を、向けられた。


――……そして。だぁんっ! と言う乾いた銃声が響く。


 咄嗟に眼を瞑った詩乃だった。動けない事に嘆きながら、眼をぎゅっと瞑った。だが、撃たれたと言うのにその銃の衝撃が来ない。詩乃がゆっくりと、顔を上げると……、そこには彼がいた。

『……大丈夫、だ。……大丈夫』

 詩乃を守る様に、銃弾の盾になる様に、男に背を向け、詩乃を見ていた。口元から流れるのは一筋の血――……。

 だけど、そんな事どうでも良いと言わんばかりに、笑顔を見せてくれた。そして、手を握ってくれた。……温かい手だった。


『何も……心配、する事、無い……、大丈――』


 そして、彼の身体にまた、銃弾を撃たれ、自分を庇って倒れ……ッ。




 その瞬間、目の前が再び光に包まれた。




 映るのは、あのぼろマントの男、そして跨った金属馬。悪夢から別の悪夢へと戻されたのだ。

 すぅ、っと視界が暗くなり、両足から力が抜ける。

「シノン! 掴まれ!!」

 いきなり強く声が響いてきたと同時に、伸びてきたてがキツく左腕を握った。

「き、きり……っ、 あ、ああっ、か、かれ、が……かれが、……こ、ころ……っ わ、わたしの……せい、で……っ」

 シノンは、震える声で必死にそう言っていた。

 キリトは、シノンのその訴えに今答えている場合ではなかった。バギーのアクセルを踏み抜きながら、前輪を浮き上がらせる。所謂、ウイリーをさせて、道路へと飛び出していたのだ。僅かに落ちたギアだったが、たちまちトップギアに達する。

「シノンっ! 落ち着けっ!!」

 キリトは最低限運転に支障が無い程度に、身を乗り出し
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