暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第193話 温かい背中
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たんだ。


 これは運命だ。
 逃れることは出来ない。たとえ、GGOをプレイしていなかったとしても、もう一度、この男に追いつかれていただろう。……全ては無駄だった。今までの足掻きも全て意味などなかった。

 そんな巨大な諦念の中、ただ一粒の砂の様な……いや、二粒の砂の様な小さな感情。


――諦めたくない、こんなところで終わりにしたくない。だって、漸く判りかけてきたのに。《強さ》の意味が、戦うことの意味が、……彼等のそばで、……見て、見ていれば……。


 それらの思考が、ついに轟いた銃声が断ち切った。

 どこを撃たれたのかは判らない。……でも、シノンは瞼を閉じ、自分の意識が消える瞬間を待とうとした。アレに撃たれたら……現実世界でも死が待っているから。ただ、その永遠とも思える時間の中で。


――もう一度、あの温りを感じたかった。死ぬ前、に。……もう一度、手を握って欲しかった。


 想い馳せていた。
 なぜ、出会ったあの時に……、ちゃんと伝えられなかったのか、と再び後悔も滲んでしまっていた。


 
 そして、どれくらい経ったのだろうか。



 何時まで経っても、その時は来ない。シノンは、ゆっくりと瞼を開けた。目の前にいるのは、過去の自分自身の罪。……悪夢。

 ……の、筈だった。






――……言った筈、だろ?






 いつ、現れたのか、判らなかったが、もう1人、……目の前にもう1人いたんだ。音もなく、気配もなく、ただ……あの男の前に立っていた。

「お前には、お前たちには何の力も無い。……ただの、犯罪者だ!」

 地の底から、響く様な声が場に、この都市廃墟に響いた。……銃声と共に。

 シノンは、信じられないモノを見た様に、眼を見開かせていた。

 だが、あの時の様な氷の様な感覚ではない。言いようのない何かを……感じた。目の前の人物を見て。触れてもいないのに、温かさを感じられるその人物の背中を見て。


 その一撃を受けた死銃(デスガン)は、まるで独楽のように、身体を回転させながら、後方へと吹き飛んだ。だが、それは致命傷では有り得ない。

 死銃(デスガン)は撃たれる寸前に、身体をずらして、直撃する場所を変えた。胴体部を狙って撃った一撃は、左腕に当たったのだ。そして、死銃は衝撃をいなす様に身体を回転させたのだ。


「ちっ……!」


 それを見たリュウキは、舌打ちをしながらも、素早く倒れている彼女に寄りかかる。彼女の身体を抱き抱え、そして走り出そうとしたその時だ。

 まるで、化物の咆哮の様な銃声が続け様に鳴り響いた。その音が、マシンガンの類だと判ると。直ぐにビル壁に空いた大穴に飛び込んだ。


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