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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第186話 届かない言葉
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シノンが優勝するって。絶対」
「ん、ありがと。君はこれからどうするの?」
「うーん……どこかの酒場で中継を見ようと思ってるけど……」
「じゃあ、終わったら後その酒場で祝杯か自棄酒に付き合ってね」
かすかに微笑みながら会話をするシノン。
だが、シュピーゲルは違った。……シノンの最後の言葉の後に、一瞬俯くと、直に顔を上げてシノンの手をとった。
そして、何処か切迫した表情を見せ。
「シノン、……ううん。朝田さん」
この世界、いやどのVRMMOの内部でもプレイヤーの本名を呼ぶ事はマナー違反だ。それを知らない筈のないシュピーゲルの言葉に、シノンは仰天した。
「な、なに……?」
「さっきの言葉、信じていいんだよね?」
「さっきの、って……」
「待ってて、って言ったよね……? 朝田さんが、自分の強さを確信できたら、その時は………ぼ、ぼくと……」
「い、いきなり何言い出すの!」
顔が一気に熱くなるのを感じながら、シノンはマフラーの奥に顔をうずめただけど、シュピーゲルは一歩踏み出す。
「僕、僕……、ほんとに朝田さんのことが……」
「ごめん。今はやめて」
シノンは首を左右に振る。……強い口調で言いながら。
「今は、大会に集中したいの。……最後の一滴まで、力を振り絞らなきゃ、到底、敵わないから。……到底、勝ち抜けられない戦いだと思うから」
「そっか、……そう、だよね でも、僕、信じてるから、信じて待っているから」
「う、うん。……じゃあ、私、そろそろ準備があるから……行くね」
シノンの言葉は本当だ。
『今は大会に集中したい』……それが考えられる内で、穏便に済ますことが出来る本当に考えていることだ。
――……今のシノンの心には、何か、判らない何かが芽生えている。
それをハッキリさせるまで、答える事が出来ない、と思っていたのだ。だけど、それをどう言葉にすれば良いか判らなかった。そして、今の自分の胸中を、今の彼に言うべき言葉じゃないとも、思えてしまっていたのだ。
「頑張って。応援してる」
そんなシノンの葛藤を判る筈もなく、シュピーゲルは熱っぽく言葉を続けた。シノンはぎこちなく微笑んでから、この場を後にした。
――自分の態度が思わせぶり、だったのかな。
シノンはそう考えていた。
彼が、恭二が自分に好意を向けている事も、そして自分自身も当初はそう思っていた。だけど、自分のことで手一杯すぎていた事も間違いのない事実だった。
かつての、もっとも強く記憶に刻まれた記憶の中のあの男性の顔はことあるごとに、蘇り、発作を誘発するのだ。
――あの男性が、今も自分を見ている。……底なし沼の様な光の無い眼が自分を見ている。
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