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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第186話 届かない言葉
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ために胎児を諦める。移植待ちの患者さんを助けるために、脳死の患者さんを諦める。大規模な事故や災害の現場では、トリアージっていって、患者さんに優先順位をつけたりもする。……もちろん、正当な理由があれば殺してもいいってことじゃないよ。失われた命の重みはどんな事情があろうと消えることはない。……でも、その結果助かった命の事を考える権利は、関わった人たち皆にある。君にも、竜崎君にも。……だから、君達は自分達が助けた人のことを思い浮かべることで、自分も助ける権利があるんだよ」
「………」
和人は、何も言えなかった。
何も言葉が出なかったのだ。本当に助ける権利なんてあるのか? 自分なんかに……。
「それにね。本当に忘れてしまったなら、君はそんなに苦しんだりしないんだよ」
毅然とした声で続ける安岐。左手で和人の頬にかけると、自分の方を向かせた。縁無し眼鏡の奥の瞳には強い光が浮かんでいる。
「君は、君達は、ちゃんと覚えている。思い出すべき時が来たら、全部思い出す。だからね、その時は一緒に思い出さなきゃダメだよ。君が、君達が守ってきた人達を、助けた人達の事を」
その囁きと共に、安岐は和人の額に自分の額をこつんとぶつけた。頭の中で渦巻いていた想念が鎮めていくようだった。
和人は安岐に感謝を伝えつつ、アミュスフェアを装着する。過去と向かい合うために、あの世界へと入る。
『1人じゃないから……』
和人の中に、流れた言葉。安岐の言葉と同じく、自分の中にながれてきた言葉。そう、自分は1人じゃない。安岐もそうだし、皆も一緒だ。
和人は完全に乾いた目元をしっかりと拭うと。
「リンク・スタート」
硝煙の巻き上がるあの世界へと入っていった。
〜朝田家〜
その夜。
1人の戦士。……女戦士があの世界へと向かおうとしていた。いや、厳密には今は違う。……弱い、何よりも弱い女のままだ。
だからこそ、恐れずに今、過去の亡霊に怯えたままの自分を、この手で乗り越える為に、あの世界に。
詩乃は、自分が最も安心できる空間、自分の小さな部屋からダイブする為、心と身体を落ち着かせていた。
色々と考える、想う所は沢山ある。それらのとりとめのない思考を彷徨わせながら、コンビニエンスストアで購入したヨーグルトを小さなスプーンで掬い、口に含んだ。入る前に、暴飲暴食等は厳禁だ。アミュスフィアは、現実環境からの干渉をほぼ99%排除する事ができるが……、残りの1%で痛い目にあった事があるからだ。
それらの経験から、詩乃は快適なゲームをする為のノウハウを学んでいったのだ。
「――よし!」
詩乃は、両頬を叩き気合を入れ直し、ベッドに
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