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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第186話 届かない言葉
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――強いな。


 そう言う言葉を安易に使ってしまったんだ。表面だけを見ただけで。


 その後も、沢山身の内を曝け出した。
 殺した人達の名前も、顔も全て忘れていた事、そして……自分よりも深い苦しみを持っている彼に言う事で楽になろうとしたのではないか? と言う事も。

 それらを聞いていた安岐は、ただ優しく和人の右肩に手を置いた。

「ごめんね、桐ヶ谷君。カウンセリングしてあげるなんて偉そうなこと、言ったけど、私には君の、君達の抱えた重荷を取り除くことも一緒に背負ってあげることもできない」

 和人の頭に手を乗せ、撫でる。

「私はSAOは勿論、VRゲームもやった事ないから、君の使った《殺した》って言葉の重さは量れない。……でもね、1つだけ言える事はあるんだ」
「……え」

 安岐の言葉は予想外だったのだろう。和人は思わず声をあげていた。
 当然だ。人を殺したなどという話を誰が好き好んで聞くものだろうか? 安岐の言うとおりカウンセリングなど簡単に出来るものではないと考えるのが普通だし、何より彼女は命を救う仕事をしている人だから。

「……君が言うアイツ、彼の事、私も知ってる」
「!」
「桐ヶ谷和人君と一緒に戦った彼。……竜崎 隼人君。経緯は私の友達が今彼の元にいるから、……同じく色々と話を聞いてきたの。私もカウンセラーもしているから、彼も君にも、力になれたかどうかと言われたら、首を縦には決して振れないけど」

 そう、防衛省の渚、菊岡と同じ任務を受けており、別ルートで解決の糸口を探っている彼女と安岐は友人関係なのだ。

「……竜崎君はね。桐ヶ谷君と同じ事、言ってたよ」
「え……」
「『友達に、初めて出来た友達に、酷い事を言ったんだ』って。『……沢山貰っているのはこっちの方なのに』って。……言葉のところどころは違うけど意味は、君とまったく同じに聞こえたよ。……彼も沢山抱えている。私なんかじゃ到底拭えない。背負う事も出来ないモノを。……でもね。 それでも彼は『救われた』って言葉を何度も使ってた。 桐ヶ谷君も竜崎君に沢山あげる事できた。それはきっと、竜崎君もそう」

 安岐は、そう言うとゆっくりと和人を抱き寄せた。

「桐ヶ谷君も、竜崎君も、大変な事を。……重みを背負ってしまった。だけど、そうしなきゃならなかったのは、誰かを助ける為なんでしょう?」
「え………」

 隼人の事を知っていた事もそうだが、それ以上に予想だにしないものだった。

 いや、隼人なら……と思えたが、自分自身は、そんなにはっきりと言えるだろうか?確かに、存在はしていたかもしれない。……だけど、だからと言って割り切れるモノではない。

「医療現場でもね。命を選ばなきゃならない場面があるの。母体を助ける
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