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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第185話 温もりの違い
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に。……簡単に、出来るなんて言っちゃいけない事だ。 でも、これだけは忘れないでください」

 綺堂は、隼人の肩から頭に手を乗せた。

「私は、坊ちゃんの傍に居ます。……支え続ける事は出来ると思います。そして 私は隼人坊ちゃんの事もよく知っているつもりです」

 隼人にそう言うと、隼人は立ち上がって綺堂の眼をじっと見た。隼人の目には、うっすらと涙さえ浮かべている。

「隼人坊ちゃんがそうしなければ、そうしなければ、失われてしまうモノも沢山あったのでしょう? ……お嬢様の意志を強く受け継いだ坊ちゃんです。自分よりも他人を想っての事。 ……誰かを助ける為にした事でしょう。正当化をするつもりはございません。……ただ、失ってしまった。奪ってしまった。……それらと同じくらい、隼人坊ちゃんがした事で、助かった人達の事も。考えてみてください。 その人達はきっと、きっと……笑顔ですよ」
「っ……」

 隼人は、綺堂の話を訊いて……言葉に詰まる。
 あの世界での事が、負の感情ばかりだった記憶の中で、光が少し、少しさしてきている気がした。

「失われた命の重みは、どんな事情があろうと消えることは無い。ですが、その結果 坊ちゃんが助けた人の事を。皆さんの笑顔を思い浮かべて、自分を助ける。赦す権利があるんですよ。……それに」

 綺堂は笑顔の質を一段階上げた。

「重すぎる様でしたら、お友達の皆さんの事も、もっともっと頼って下さい。きっと、皆さんも同じ気持ちだと思います。 皆さんにも」
「で、でも……オレは十分すぎる程、皆に。皆にもう……」
「坊ちゃんがそう言って、皆さんは『うん』と頷いた事、ありますか?」
「っ……」

 隼人は、その言葉を訊いて、詰まらせた。綺堂の言葉につられて、まるで意思があるように、記憶の扉が開いたんだ。


『……な! 何言ってんの! 知らないの!? アンタに救われた人、この世界に無茶苦茶いるんだよ!?』
『……馬鹿言うなよ。オレがお前にどれだけ貰ってると思ってんだよ』
『そ、そんなっ! 私の方がお世話になったんですからっ!!』
『ありがとう。 忘れないよ。あの子の事、助けてくれて……』
『リュウキくんから色々と貰ったんだ。 ……この世界に住む皆、貴方から貰ってる。返しても返しきれないほどに……だよ?』


 笑顔でそう言ってくれる皆がそこにはいた。沢山の言葉が流れ出てくる。膨大な程に。……本当に心が救われる様な気がした。

「頼る事も、大切なモノなんです。私だけじゃなく、今まで以上に隼人坊ちゃんの事を助けたい、と思ってくださってる皆さんがいるんですから」
「……うん」

 隼人の右目から、自然と一筋の涙が流れ出ていた。それは先ほどまでのモノとは違い、どこか温かい涙だった。



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