4話
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惑を抱き、いつものように太陽の病室に向かっていると、両親が俺の担当医と廊下で話していた内容が聞こえてしまった。
『祐さんが、今までにない未知のウイルスに感染しているということは、以前お話しましたね?』
『は、はい。…先生、祐は助かるんですか』
『今のところは、何も分かっていません。今各国の医師が全力でウイルスの研究を行っています。そう遠くないうちに、ウイルスが発症したらどうなるかわかるでしょう』
と。
この時の俺はだいぶ混乱したな。
何だよ未知のウイルスって。
今まで外に出た記憶すらないのにどこでもらってきたんだよ。
「…冬花さん。未知のウイルスって何なんですか。名前と、病名くらいはもうつけましたよね?」
「…!…もう、そこまで分かっているのね」
「話す場所はもっと考えた方がいいですよ。廊下なんて、誰が聞いてるかわからない」
「…知って、後悔しない?」
「しない」
冬花さんは意を決したように顔を上げた。
看護師として患者に向ける、凛々しい顔。
「風間祐さん。あなたは、《急性脳死記憶障害》にかかっているわ」
「《急性脳死記憶障害》?」
「えぇ。突発的に脳にある記憶を保護する為の器官、海馬が死滅し、直前の記憶を失う、又は、今までの記憶すべてを忘れてしまう、末期に近づいてくれば、体全体の免疫力も大幅に下がってしまう」
「免疫力は、まぁ分からなくもないですけど、海馬が死滅、って…そんな無茶苦茶な話あるんですか。死滅したら、その後の記憶も覚える間もなく無くなりますよね?」
「違うの。海馬が死滅したら、再び新しい海馬が生まれるのよ。ビジブル菌によって、新たな海馬が生成されるの」
「…は?そんなの」
アニメじゃないんだから。
「それだけじゃないわ、ビジブル菌は脳の海馬だけでなく他の器官にも増殖して」
「……いい」
「え?」
「……もういい。冬花さんも言ってて辛いだろ。だからいい。とりあえず、俺がかなりやばいウイルスに感染していることはわかった」
「風間さ」
「何も分かってないって思ってますか?けどそれでいいです。要はあれだろ、体内のウイルス潰せばいいんですよね?」
「潰す?」
「はい。病は気から、とも言いますし、せいぜいビジブル菌が音をあげるくらい余生を謳歌してやります」
「…風間さん」
沈んだ表情をする冬花さんに、俺は笑いかけた。
「でもそんな大事なこと黙ってたんですね、冬花さん」
「ごめんなさい。口止めをされていたの」
「じゃあ、神童拓人の病室教えてください」
「…え?」
「神童拓人の病室を、教えてください」
「……え?」
冬花さんのほうけた顔を、俺は初めて見た。
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