1話
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人が過ごす最低限のもの、一部の娯楽機械があるだけの、無味乾燥な部屋。
俺は1人ベットの上でゴロゴロしていた。
「あぁぁぁ…暇だぁぁぁ…」
暇だけどなぁ…何もしたくねぇ…。
むしろすることなんてねぇ…。
とりあえずテレビでもつけよう。暇すぎて精神がおかしくなる。
リモコンを手繰り寄せ、電源を入れる。
表示されたのは夕方ワイドニュース。
『昨夜、サッカーの名門校、雷門中が少年サッカー日本一を決める大会、ホーリーロードにて優勝しました』
雷門中、かぁ。
「ん?」
見覚えのあるトンガリ頭の少年が映っている。
背番号は10番。
「おぉ…さすがエースストライカー」
優勝してくれてよかったようん。
ファイアトルネードダブルドライブかっこよかったなぁ。
「サッカーねぇ…」
サッカーは嫌いじゃない。むしろ好きなほうだ。それもかなり。
両親も、外出するのこそ禁じやがるが、趣味についてはとやかく言ってこないようだ。
まぁ、言ってきたら言ってきたらで、ブチギレそうなものだ。俺が。
雷門中は俺が一応在学している学校でもある。
無論、教室はおろか校内にすら入ったことがない。クラスメイトになんて会ったこともない。
病院の外に出られない。
試合をテレビで見る度に思った。
『サッカーがしたい』と。
1度でいいから、ボールに触って、あちこち走り回ってみたい。
無理ってことはわかってる。どうせ言ったところで、俺の今の行動範囲を狭めてくるだけだ。
…あぁ、そうだ。
ちょうどこの時間ならリハビリも終わってるだろうな。
おめでとうって、言ってこないと。
俺はテレビを消し、病室を後にした。
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