暁 〜小説投稿サイト〜
妖精の守護者 〜the Guardian of fairy〜
ゴーレム
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つて、この世界は邪悪な者に支配されていた。その邪悪な者に対抗するために、女神が特別な力を与えた妖精。
 それが、アスタリアの戦士。
 マーテルは、妖精王と共に旅をして、次々に邪悪な者を倒していき、遂にその主を倒して、世界に光を取り戻したとされている。
 およそ、千年も前の話だ。マーテルと妖精王はアスタリアの加護を受け、不老不死となった。
 しかし、マーテルは、

「今年は妖精王も大会を見に来るらしい」

「そう……なら、リーゼが張り切るのも分かる気がする」

「迷惑な話だ。戦うのは俺だってのに」

 ……英雄マーテルは帰ってこなかった。妖精王のみが村に帰還すると、森の扉を深く閉ざし、妖精の国をより豊かにした。来るべき、災厄に備え、民の中からゴーレムの使い手を選出する。
 それが、アスタリア祭の真の目的なのだ。

「……ゼス、あなたが家に来てからもう十五年も経つわね」

「うあ? なんだ、突然」

「ううん……なんだかんだ言って、あなたは私たちの親代わりだったなぁと思って」

「そんなもんじゃねぇだろ。お前は小さい時からしっかりしていたが、リーゼは誰に似たんだか、まるで言うこときかねぇし」

「うふふ……本当に、誰に似たんだか」

 何がおかしいのか、シャルはしきりに喉を鳴らしながら、笑っていた。

 俺が、こいつらに出会ったのは、十五年ほど前のちょうど真冬の時期だったか。
 
 簡単に言うと、俺は野垂れ死にしそうになっていた。自分が誰なのか、なぜ妖精の森で転がっているのか。その全ての記憶を失っていた。
 一つの手掛かり、紙切れに書かれていたこと以外、俺は自分のことを何も知らない。
 ゼス、という名前。ゴーレムという存在。この姉妹が主人であること。それ以外は何も知らされていないのだ。

「あなたが来てくれたおかげで、家が明るくなったわ。ありがとう、ゼス」

「おいおい、俺はこれからゴーレムやめるって言ってるんだぜ?」

「大会に勝つと、何でも願いを叶えてくれるらしいわよ」

「剣を寄越せ。俺は獲物がないと上手く戦えねぇんだよ」

 なぜそれを先に言わなかったんだ、あいつは? それがあれば、俺はゴーレムをやめることもできる。いや、まて。釣り道具を新調することも可能だろう。ああ、夢が膨らむ。世界は美しいなぁ!

「嫌よ、私。お前とはもうリンクしないから」

 どこから聞いていたのか。いつのまにかリーゼは、自室の扉前に寄りかかり、俺たちの話を聞いていた。盗み聞きをするなと言われなかったのか。いや、言ってなかったな。

「誰もお前と出るなんて言ってねぇだろ」

「はぁ? だったら誰と」

「シャル、頑張ろうぜ。優勝すれば母ちゃんこと、何か分かるかも知れねぇぞ」


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