巻ノ十三 豆腐屋の娘その十二
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「上田までは狙っておらぬ」
「そこまではですか」
「真田家の場所までは」
「入ってはきませぬか」
「上杉家は」
「上杉家は関東管領、しかし信濃は西国に入っておる」
東国ではないのだ、信濃や甲斐、駿河までが西国であり室町幕府では将軍が治める国々だった。東国は鎌倉公方の治める国々だった。そして関東管領はその鎌倉公方を補佐する言うならば関東全域の執権だったのだ。
「だからな」
「信濃に入られようとも」
「あまり入られぬ」
「目指すのはあくまで東国」
「そうなりますか」
「真田家より北条家じゃ」
上杉家の敵はというのだ。
「謙信公の時からの因縁がある」
「もっと言えば、ですな」
穴山がその目を鋭くさせて言って来た。
「謙信公が継がれる前の上杉家からですな」
「そうじゃ、北条家の祖早雲公からじゃ」
「でしたな、早雲公は相模を手に入れられそこから上杉家と争っておられました」
「その争いの因縁はな」
「上杉家同士も争っていましたが」
海野が言うことはというと。
「山内と扇谷に分かれて」
「そこに北条家が来てな」
「余計にややこしくなっていましたな」
「左様、だからじゃ」
それでというのだ。
「上杉家と北条家の因縁は根が深い」
「土地の争いもですな」
「それもありますな」
「あくまで上杉家は関東管領、領地は越後にじゃ」
これは長尾家、謙信の本来の家の領地である。もっと言えば謙信の父である長尾為景が手に入れた国だ。
「上野等じゃ」
「つまり関東管領のですな」
「本来の領地ですな」
「そこを取り戻す」
「その様にお考えなのですな」
「そういうことじゃ、だからじゃ」
幸村は上杉家えの動きも見据えていた、それも確かに。
そのうえでだ、大坂に向かいつつ周りの自身の家臣達に話すのだった。
「あの家は上田までは来ぬ」
「ではやはりですな」
「徳川家か北条家ですか」
「どちらかが上田まで来ますか」
「そうなりますか」
「おそらく徳川じゃ」
幸村の読みではだ。
「北条家は上杉家と争い続けていることからもわかるな」
「東国ですな」
「関東に主な目が向いていますな」
「だから信濃よりもですか」
「東国ですか」
「あちらに向かう、そして里見家や佐竹家、宇都宮家とも争う」
上杉家とだけでなく、というのだ。
「関東の古い家々とな」
「ではやはり」
「上田に来るのは徳川家」
「そうなりますか」
「今にも信濃や甲斐の南に入っておろう」
このこともだ、幸村は見ていた。
「上田まで至るには時があるが」
「間違いなくですか」
「上田まで来ますか」
「そして当家と戦になる」
「そうなりますな」
「そうなる、だから拙者は旅をしてじゃ」
そのうえでというのだ。
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