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逆さの砂時計
解かれる結び目 12
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 「マリア !?」
 キスの間に、二人を包む空気が変わった。
 室内の静寂は川のせせらぎに。薄暗さは雨雲が引き継いだ。
 ほんの数分前、仲間が揃って居た、最後の場所。
 「ありがとう、アルフ」
 貴方がくれた言葉。貴方がくれた想い。全部、私の勇気に変わってた。
 だいっきらいなんて言ってごめんなさい。本当は………
 ……言えないわね。私は嘘吐きだから。
 「さよなら」
 貴方の姿を。太陽のような金の髪と橙の虹彩を。しっかり目に焼き付けて、目蓋を閉じる。
 「! マリア!」
 背を向けて走り、思い浮かべるのは玉座の間。
 二人の仲間が殺された場所。魔王を結界で閉じ込めている場所。
 「痛っ……?」
 ズキ、と翼が痛んだ。
 足を止めて開いた視界は薄暗い室内を捉えて
 「勇者を逃がしたのか? 女神マリア」
 階段の一番下に座ってるレゾネクトと目が合った。コーネリアとウェルスを一瞬で殺した悪魔は、本当に何の害意も持たない瞳で私を見てる。
 「何故、泣く?」
 「……悲しいからよ」
 不思議そうに首を傾げる様子は、まるで無知な幼子そのものだ。年齢も容姿も私より遥かに上の筈なのに。
 美しいだけの、可哀想な青年。
 「貴方が……貴方を愛せる誰かが居れば、良かったのにね」
 両手を合わせて、王城全体を包む空間を想像する。
 ごめんなさい、エルンスト。こんな使い方をするとは、私も思ってなかったの。
 「一緒に来てもらうわよ、魔王レゾネクト」
 左肩に飾ったブローチを彩る宝石の内側に、包んだ空間を……移す!
 「……ああ。城ごと空間を移動させたのか。凄いな。真っ暗だ」
 薄暗い室内が真っ黒な闇に染まる。私の肩から消えたブローチは、地面を抉って消えた王城跡に転がっているだろう。風化するなり誰かが壊すなりしてくれれば良いのだけど。
 大切にするから……なんて、本当に酷いわね。私。
 また一つ、気持ちを嘘にしてしまった。
 「それで? 貴様は何故、此方に残ったんだ?」
 「扉を完全に閉ざす為よ。私が外に出たら道が出来てしまうもの。貴方をあの世界から完全に隔離するには、他に方法が無かった」
 予定は狂ってしまったけど、結果としては神々の世界で眠るのと同じだ。内側から閉めた扉は、外側からでは開かない。私か、それ以上の力が無い限りは。
 「隔離? 殺しに来たのに?」
 「アルフは貴方を殺そうとしなかった。だから、隔離したのよ」
 「……理解できないな。俺を殺すのが勇者一行の役目だろう。放棄したのか?」
 「アルフは貴方の疑問に答えようとしたのよ。貴方と向き合おうとしただけ。彼は、向き合える相手を殺す必要は無いと思ってるの。それが例え魔王であっても」
 その優しさがアルフの強さで、弱さだった。
 彼は今、コーネ
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