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逆さの砂時計
解かれる結び目 12
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と羽根は引き合うのか……力は、より強い力に惹かれる。なるほど」
 離れた場所からレゾネクトの声が聴こえる。アルフが私を横たえて立ち上がる。
 「貴方を、可哀想だと思う」
 アルフの全身が純白の光を放つ。闇に慣れた目には痛いほどの眩しさが、玉座の間全体を明るく照らす。玉座への階段の一番下に座ってるレゾネクトへ、神々の祝福を授かった剣の切っ先を向ける。
 「できるなら助けたかった。一人がどれだけ恐ろしいか、俺はよく知ってる。でも、貴方はマリアを傷付けた。それだけは……絶対に赦せない!」
 「アルフ……ッ!」
 起き上がろうとする私の側で剣を構え、跳ぶように真っ直ぐ走る。白い閃光が赤い絨毯の上を滑って……首を傾げるレゾネクトの目前まで迫った。
 「助ける? 恐ろしい? 貴様の言葉は、どうにも不思議な物ばかりだ」
 切っ先がレゾネクトの額……の、残像を貫く。冷静に剣身を返して背後に腕を回すと、ギリギリの距離で躱したレゾネクトの横髪が数本、はらりと床に落ちた。
 「それに気付けていない貴方が哀れなんだ、レゾネクト!」
 足先を反転して間合いを詰めた振り下ろす斬撃も、薙いだ一閃も、素早い刺突も、レゾネクトは総て少ない動きで避ける。
 「貴方は探してるんだ。自身が存在してる理由、生きても良いと言われる理由を!」
 「生きても良いと言われる理由?」
 「自身を知りたいってのは、そういう事だ! 世界の何処にも居場所が無いと感じてる。それが寂しいんだ。恐ろしいんだ。貴方は孤独を埋めて欲しかっただけ!」
 何故この世界に居るのか。何の為に産まれたのか。どうして生きているのか。存在する理由が知りたい。存在し続ける意味は何処に在るのか。
 ……教えてくれないか。
 「誰かに尋きたかったのは。教えて欲しかったのは。誰かに存在を認めてもらいたかったからなんだよ!」
 剣で斬る。突く。光の刃で、軽々と避ける黒い影を追い掛ける。
 「貴方は可哀想だ。自分で自分を孤独に追い込んで、それでも求めてる。居場所を求めてるんだ」
 だから教えてあげたかった。見過ごしてきた物事の中に、きっと答えは在ったんだと。気付かせてあげたかった。
 アルフは怒りを隠そうともせず、それでもレゾネクトを憎んだりせずに、まだ向き合おうとしてる。レゾネクトの問いに答えようとしてる。
 でも。
 「何かを獲る為に居た? それを得る事が、俺の存在を確定させる? それは後付けじゃないのか? いや……勇者達も使命を与えられたのは産まれた後だから、そういうものなのか?」
 難しい問題を解こうとしてる子供みたいな表情で、アルフの攻撃を躱し続ける。
 「自分で決めて良いんだ。産まれた理由も生きてる意味も。でも、一人じゃ絶対に見付けられない。鏡になる物が無ければ、自分の姿を見るのも叶わないの
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