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逆さの砂時計
解かれる結び目 12
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リアもウェルスも失って、とても悲しんでる。護りたかった世界の欠片を目の前で砕かれて……それでも、レゾネクトとの対話を望んだ。レゾネクトの心を助けようとしたんだわ。
 でも、アルフの言葉がレゾネクトに届くとは思えない。彼の闇は深すぎる。あのままじゃ、アルフまで殺されてた。
 私は……貴方だけは死なせたくなかった。どの道、傍に居られないとしても。
 貴方の死だけは絶対に見たくなかったのよ、アルフリード。
 「疑問? ああ、そうだ疑問だ。俺は何故、この……いや、あの世界に居たんだ? 貴様でも構わない。教えてくれ」
 レゾネクトが繰り返し口にする疑問。
 自分は何故産まれ、何故生きているのか。
 ……目的が見つからないのね。何処へ行って、何をしたら良いのか。何処へ行きたいのか、何をしたいのか。
 与えられる標も無く、自らで獲たい物も見付からず。ただただ強大な力だけが手元に有って……もしかしたら、その所為で余計にどうしたら良いのか解らなくなってるのかしら。
 既に強いから強くなりたいとも思わないし、欲しい物や護りたい物と言われても、この様子では触れたものを片っ端から壊して来たのだろう。
 あっさり壊れるものに、興味を抱く余裕が無かったのかも知れない。
 「その疑問には誰も答えられないわ、レゾネクト」
 法衣の袖で涙を拭う。擦れた目蓋がちょっと痛い。
 「勇者は、教えると言ってた気がするが」
 「そうよ。教えようとしてた。貴方が見落として来た世界を、もう一度ちゃんと見せる事で、貴方自身が気付けるように。貴方の疑問は、貴方にしか解けないのよ、レゾネクト」
 たくさんのものを見よう。たくさんのものに触れよう。たくさんの音を聴こう。
 感じるのはその目と鼻と耳と……とにかく貴方自身の総て。誰かからの言葉だけじゃ伝わらない熱を、貴方自身で感じるの。
 その中に、心を動かす何かがきっと在る。それを見付けて初めて気付けるのよ。
 貴方が世界とどんな風に関わりたいのか。どんな風に生きて行きたいのか。
 それが、産まれた理由になる。
 それが貴方の存在を形作るの。
 「貴方の目に、美しいと感じるものは無かったの? 心地好いと感じる音は? 手当たり次第に壊して、その手に何か一つでも残ってる? 何も無いでしょう? 貴方が探している答えは、その手で掴みたいもの。包みたいものだったのよ」
 「……何かを掴む為……包む為に、居た? 美しい もの?」
 闇に沈んだレゾネクトは動く気配も無く、ぽそっと呟いた。
 「……触れてみたい美しいもの……なら、此処にも在るな」
 「?」
 「貴様は美しい」
 「……っ!?」
 闇の中に、透明感がある紫色の虹彩が浮かぶ。
 褒められたのに悪寒が走ったのは、決して好意から来る言葉では無いと理解してるからだ。
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