暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 11
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「ずっと、知りたいことがあったんだ」
「知りたいこと?」

 燃え上がるような朝焼けの下、アルフの腕の中で目を覚ました。
 彼の瞳はとても穏やかで、私の頭を撫でる手も優しい。

「悪魔達が破壊衝動に忠実な理由」
「……?」

 破壊衝動に忠実な理由?
 そういう生き物だから、ではなく、他に理由があると言うの?

「今、ちょっとだけ解った気がする」

 アルフが上半身を軽く起こし、私の頬にキスを落として、微笑んだ。
 これまでに見てきたどんな表情よりも綺麗で、眩しい笑顔。

「ありがとう、マリア」
「アルフ?」

 体が離れて、触れ合っていた場所から急激に冷えていく。
 立ち上がったアルフは川に入って膝まで浸かり、身を清め始めた。

「マリアもおいで。準備が済んだら、行こう」
「……ええ」

 私も立ち上がり、彼の手に吸い寄せられて、水中へ足の爪先を沈める。
 冷たさに驚き、転びそうになった私を支えて。
 彼は、ドジだなあと朗らかに笑う。
 それから私をじっと見て、優しいキスをくれた。

 離れていかないで、とは、もう……言えない。



「おそーい」
「悪かったな。どうせ、そっちも取り込んでたんだろ?」
「あったりまえ!」

 野営地に戻って、周りの様子を見る。
 悪魔からの襲撃はなく、出発準備も既に整っていたらしい。
 コーネリアとウェルスは身支度を万全にして、私達を待っていた。

「愛しい妻との濃厚なあれやこれを見せつけてやりたかったぜ。けけけ」
「うるさい、バカ」

 いつもなら大声で何かしらのツッコミを入れるコーネリアが。
 今は静かに、ウェルスから視線を逸らした。
 口先とは裏腹に、ウェルスはコーネリアに対して真摯(しんし)だ。
 昨夜もきっと、二人にしか解らない思いを真面目に向き合って話し合い、確かめ合っていたんだろう。

 もしも私に、それが許されていたのなら。
 アルフと添い遂げることが許されていたとしたら。
 二人のような夫婦になりたかった、な。

「じゃあ、状況整理から。心構えも同時にするぞ。相手は移動してしまった可能性もあるが、引き返せないって覚悟で臨まないと、油断したら即死だ。常に最悪を想定して、最良の結果を思い描きながら、為すべきことを為せ」
「おう!」
「当然だ」
「……ええ」

 四人それぞれで適当な岩に座り。
 これまでの経緯と、見える範囲で得てきたレゾネクトの力に関する情報。
 それから、自分達が使えるもの、持っている力を、全員で再確認する。
 途中、コーネリアがアルフと私にタオルを投げ渡してくれた。
 おかげで、濡れ髪で敵に挑むとかいう、おかしな状況は避けられそうだ。

「行き先は、隣の国の
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ