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逆さの砂時計
解かれる結び目 10
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アルフの言う通り魔王が一つ所に留まってくれてるなら、今が対面する好機じゃない。これまでその為に長い旅を続けて来たのに。此処に来て二の足を踏んでどうするのよ。
 本当にどうしたの、私?
 「……アルフ。一晩様子見てからにしないか?」
 「コーネリア?」
 「確かに、情報通りなら私達にとっては良い機会になるが……相手は時々、悪魔を利用して此方を探ってる気配を見せてただろ。多分、一筋縄では行かない。冷静に状況を整理する時間が必要だと思う。勿論、準備は進めながら」
 「……ふむ」
 いつの頃からか悪魔達は本格的な勇者狩りを始めるようになっていて、退治の頻度が異常に上がってきてた。数体の悪魔から、レゾネクトの意思が関係してるとは聞いてたけど……
 「無闇に特攻すれば良いってもんじゃないからな。相手はこっちの旅の最終目的だ。焦らずどんと構えて行こう」
 最終目的。
 ……そうだ。魔王レゾネクトは私達一行の旅の終着点。彼を退ける事で、私達の旅は終わる。凶行への恐怖から世界を救えるんだ。
 コーネリアとウェルスは実家に帰って、子供達と再会できる。アルフは世界を救った勇者として堂々と故国に凱旋するだろう。私は神殿に帰り、一族最後の一柱として……
 「……。」
 「マリア?」
 ……なんで?
 まだ叶ってもいない未来なのに、どうして涙が溢れるんだろう。
 それは良い事の筈なのに。皆が今よりもずっと幸せになれる、意味がある別れなのに。それぞれの道を行くだけなのに。
 考えると胸が……痛い。
 三人が顔を見合わせて困ってるのに、涙が止まらない。
 ……そうか、私……。
 「……分かった。コーネリアとウェルスは装備の手入れを頼む。マリアは一緒に来て」
 「え?」
 「ごゆっくりー」
 私達は、勇者が悪魔に狙われてるとはっきり判ってから、村や集落には極力近寄らないようにしてる。今も、人が居ない森奥の川近くで野営しながら、容姿的に一番目立たないウェルスが、日中人間世界に紛れて情報を集めて来てくれてた。
 そろそろ日も暮れる頃。
 視界が不自由になる時に、こんな所で二手に分かれてしまって大丈夫なの?
 「アルフ?」
 さらさらと涼しげな音を立てて流れる細い川沿いを、陣が見えなくなるまで下って……私の手を引くアルフが、ぴたりと動きを止めた。
 「何に怯えてる?」
 「え……」
 振り返ったアルフの真剣な顔を見て、勝手に肩が跳ねた。
 「魔王に挑むのが、恐い?」
 「……っ違うわ! それが恐いんじゃないの! 逃げたいとかじゃないのよ! 私はもう、そんな事考えてな」
 「なら、何に怯えてる?」
 「……アルフ……?」
 真剣な瞳が少しも揺らがずに私を映してる。私の手を離して……
 え? 何? どうして抱き締めるの?
 「悪魔
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