精神の奥底
49 避けられない未来
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があった。
夜中にいきなり不安になって眠れなくなって泣きついたこともあった。
そして同じように幼い頃から何度か自分に襲いかかっては、すぐに鳴りを潜めて正体を現さなかった胸の痛み。
それらのことは全て結びつき、彩斗の心の奥深くに巣食ってたのだ。
遠くないうちにどのみち燃え尽きると潜在的に身体が覚えているなら、ダメージを顧みる行動が反射的に起きないのも納得がいくし、こんなブリキの心臓に無理やり血を通わせているなら、胸が痛むのは当然だった。
「……」
しかし無意識に気づいていたとはいえ、実際に根拠も含めて事実をつきつけられると驚きこそせずとも、衝撃ではあった。
湧き上がってきた吐き気に思わず口元を抑えて下を向いた。
心臓がバクバクと激しく脈打ち、息が苦しい。
目の前が真っ暗になった。
身体は受け入れていた現実だが、心はまだ受け入れられていない。
自分が誰なのかも分からず、自分を産んでくれた親の顔も知らず、ただ実験と暴力を受ける人生を歩んできた。
別にディーラーも、この事実を知っているのに知らぬふりをしていたハートレスにも大した怒りは湧いてこない。
神様というものがいるならば、素直に神を恨んだ。
もちろん自分より酷い境遇の子供は世界を見渡せば大勢いるはずだ。
紛争地帯で生まれ、食べ物も手に入らず、ただひたすら生きるのに精一杯な子供からすれば、自分などニホンという恵まれた国に生まれて生活しているだけマシに思えるだろう。
だが彼らと決定的に違うのは、戦場であれ、貧国であれ、未来が見えないのに対して、彩斗は来るであろう未来がはっきりとしていることだ。
未来が見えないということはある種の希望でもあり、もしかすると偶然にも食料が見つかって生き延びられるかもしれないし、戦争が終わるかもしれないという可能性がある。
だが彩斗はどう足掻いても近いうちにその命は果てる、それは避けられない運命だ。
明日が分かりきっているのと分からないのでは、前者の方が残酷のように感じていた。
真っ暗になった世界の中で必死に出口を探す。
何か希望が無ければ、やっていけなかったのだ。
「……どうせ人間、生きてればいつかは死ぬんだ」
彩斗はしばらく目を瞑って出口とは言えないが、気休めとばかりに希望を見出して、再びキーボードに指を乗せた。
タスクを閉じ、今までの自分が使ったログを全て削除する。
そして新たなコンソールを開いて検索を始めた。
文字列が美しい羅列を描き、彩斗の求めるものを探し当てる。
Dock7 : Scanners
Dock11 : EMP tools
Dock19 : Guns
Result 3
Garage[4] open 7
Password:
Ok.
Garage[5] open 11
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