無垢の時代
山郷で迷う吸血姫
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憶測みたいだけどね――そう言って、姉は笑った。
「お姉ちゃんはどう思うの?」
「私? ……そうね。そんな事があってもいいんじゃないかって気はするわ」
もっとも、もう巻き込まれるのはゴメンだけどね――姉の言葉に、ふと怖くなる。
「あの『村』は、まだあるのかな?」
その恐怖はすぐに言葉になっていた。
「どうかしらね。忘れられたくないって言うなら、少なくともここに忘れられない人間が二人いる訳だけど」
恭也と光君も忘れていないでしょうから、正しくは四人ね――その言葉に、少しだけ怖さが薄らいでいく。光の予想が正しいなら、あの『村』はある意味で目的を達成したという事になる。それが、あの『村』が本当に望んだ形ではないとしても。
「さ。怖い話はもうやめて、早く寝ましょ。大丈夫。光君ならケロリとした顔で帰ってくるわよ。もちろん、なのはちゃん達を連れて」
そうでしょ?――姉の言葉に頷く。今までだってずっとそうだった。私達夜の一族にも、本物の怪物にも、光はきっと負けない。それなら、きっと大丈夫だ。
「ほら。この子もそう言ってるわ」
光がくれた黒猫がベッドの上に飛び乗ってくる。
「うん」
頷くと、黒猫が小さく鳴いた。そして、そこで丸くなり、長い尻尾をくゆらせる。この子も一晩私に付き合ってくれるらしい。
そして。その日の夜。私は夢を見た。それは、『曾根田幸恵』の残り香だったのかもしれない。稲谷村の、なんてことはない――皆が笑っている、そんな一日の夢だった。
それは、とても幸せな夢だった。
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