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その魂に祝福を
無垢の時代
山郷で迷う吸血姫
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えた。今まで感じていた人の気配――息吹のようなものも、もう感じられない。まるで抜けがらのようだった。
「廃村になったのかしらね?」
『だろうな。現実として、この村は湖底に沈んでるんだ』
「仕方ない事だったのかもしれないけれど……。こうして見ると、やっぱりやりきれないわね」
 姉の言葉を最後に、私達の中に沈黙が落ちた。その瞬間だった。
「――――!」
 何かの咆哮が響いた。それは、声と言うより衝撃だった。
『相棒!』
「全員走れ!」
 何か考えるより先にその叫びが響く。何も考えないまま――その声に従って、私達は一斉に全力で走り出した。その私達の後ろを、バキバキと家屋を蹴散らしながら、凄い威圧感を発する何かが追いかけてくる。
「何処まで走る?!」
「曾根田邸だ。こんな狭いところでやりあえるか」
「確かに、そこなら広い庭があった気がするわ」
『そういうことだ。もうちょい頑張れ!』
「うん!」
 一気に走り抜けた先。簡素な門を飛び超え、思いのほか立派なそのお屋敷に向かって走り抜ける。その途中で、
「止まるなよ!」
 言い残すと、光だけはそこで足を止めた。反射的に足を止めそうになった――けれど、それに気付いた恭也が腕を掴み少し強引に引きずって走り続ける。
「雷樹よ!」
 その私の後ろで、光の鋭い声が響いた。いや、それは響くというよりは貫く。それほどに鋭く、そして力強い声だった。その声を聞いて、初めて恭也は足を止めた。
「あれは鉈なんかじゃどうしようもなさそうだな」
「私なんか途中で捨ててきちゃったしね」
 恭也と姉に抱きかかえられながら、初めてその姿を見やる。
 それは異形の巨人だった。頭と思しき所は、血塗れた包帯でぐるぐる巻きになっていて、ギョロリとした大きな目玉が一つだけ覗いている。両手には大きな草刈鎌――握られているというより、融合しているように見えた。
『いやぁ、こんなところにあんな大物がいるとは思わなかったぜ』
 リブロムはむしろ感心したように言った。少なくとも、光の心配をしている様子は見られない。でも、相手はあんな――私達ともまた違う、本物の怪物なのに。
「光君……ッ!」
『心配すんな。今の相棒は地味にキレてるからな。可愛い義妹に手を出されたのが、腹に据えかねたんだろうぜ』
 右腕から、深淵の魔力が立ち昇る。魔法なんて使えない私でも分かる程、とても強い力だった。その力を怪物も理解したのだろう。声にならない叫び声をあげて光へと迫る。
「咆哮よ!」
 その声に、獣の咆哮が重なる。それは衝撃波となって、怪物の巨体を押し返した。
 魔法使い御神光の戦いが始まる。




(まさか、これほどとは、ね……)
 相手から感じる威圧感はなかなかのものだった。いつぞやの、半端者の吸血鬼どもと比べれば
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