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その魂に祝福を
無垢の時代
山郷で迷う吸血姫
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もちろん、本当に犯人なら良かったとは言わないけれど。
「村の狂気はいよいよ留まるところを知らなくなったらしいな」
 再び近くの新聞受けから新聞を取り、光は言った。昭和三三年一〇月一四日。翌日の事だった。再び被害者が出たとそこには記されていた。
「この娘は確か……。『曾根田次郎』の記憶が正しいなら、賛成派の家の娘だな」
「無差別殺人だったってこと?」
「あるいは犯人が複数いるか。……いずれにしても、事件の真相は俺にも分からないな。何せ、『曾根田次郎』の記憶は『昨日』で途絶えているんでね」
 村の中を歩きながら、光はそう言った。
「外に出て、図書館にでも行けば真犯人も分かるのかもな」
「どうかな」
「五〇年前なら、この村の住民だった人だってまだ生きてる人がいるでしょ」
「いるかもしれないが、忌まわしい記憶として忘れ去っているかもしれない」
 それはとても悲しい事だった。住んでいた人達にまで忘れられてしまったなら、この村は本当になくなってしまったのだから。
「誰が悪かったのかな……?」
 誰かを吊るしあげて解決するような話ではない。そんな事には何の意味もない。それは分かっているつもりだけれど、それでも考えずにはいられなかった。本当に。何で、こんな事になってしまったのだろうか。
『さぁてなぁ』
 ひょっとしたら、その答えを知りたい――そう思った誰かの仕業なのかもしれない。ふとそんな事を思った。
「しかし……。何か村中が殺伐とはじめた気がするな」
 恭也の言葉に、辺りを見回す。言われてみれば確かに。伝わってくる人の気配が刺々しくなっている。それに、窓が割られたり、ゴミが散乱してそのままになっていたり……村中が荒れてきているようだった。
『そりゃ今まで通りとはいかねえだろうさ。ただでさえ故郷がなくなるかも知れねえって時に、殺人鬼まで徘徊してんだからよ』
 それらを一瞥して、リブロムが言った。確かにそうなのかもしれない。この村の人々の事は、『曾根田幸恵』が教えてくれる。皆良い人達だった。それなのに、
「それだけ故郷ってのは尊いものなのさ」
 ポツリと光が呟いた。その目はこの村ではなく、どこか違う別の場所を見ているように思えた。それがどこかは分からないけれど。けれど、さっきも同じ目をしていた。故郷と口にした時に。
「大きくなって、もしも他所で一人暮らしを始める事があったら、その時にでも思い返してみるといい」
 足を止め、ポンと私の頭に手を載せると、光は優しく――でも、どこか寂しそうに微笑んだ。
「しかし、直接的に仕掛けてくるとするなら、今度は誰が殺しに来る? 真犯人か?」
「さて。村の『記憶』からはすでに大分乖離している。今さらそこに拘るとも思えない。見ろ。何もしていないのにまた時間が進んでいる」
 村は一層寂れたように見
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