無垢の時代
山郷で迷う吸血姫
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源地の分からない『地震』。テレビでは色々な――それこそ宇宙人の仕業なんてものまで含めて――説が飛び交っている。大切な親友達が関わっている以上、面白おかしく騒ぎ立てられるのはいい気分ではない。でも、そういうトンデモ説こそがある意味真実に近いのかもしれない。何せ本物の魔法使いが関わっているのだから。
「大丈夫でしょ。光君がついてるんだから」
「そうだな。アイツがついていれば、まぁ大丈夫だろうさ」
姉も恭也も何てことないように言った。けれど、それは私を安心させるためのものだという事は分かっていた。
「でも、それなら何でまだ帰ってこないの?」
二人に訊いても仕方がないのは分かっていた。それでも訊かずにはいられなかった。文字通り世界を揺るがすような出来事に巻き込まれて――きっとその中心にいるのだ。どれだけ心配してもし足りない。でも、それは二人だって同じはずだった。
「大丈夫だ」
ポンと、恭也が優しい笑みとともに頭に手を載せてきた。彼こそがこの場所にいる誰よりも二人を心配しているはずなのに。
「そりゃ、アイツだって全能じゃないが……それでも、アイツは強い。そんじょそこらの怪物なんか相手にならない程にな。それはすずかだって知っているだろう?」
「そうよ。今までだって――それこそ、あの日の夜だってそうだったでしょ?」
あの日の夜。私たち夜の一族とは違う――そう。本物の怪物と出くわしたあの夜。その夜の事を、私は今も鮮明に覚えていた。
2
「もうお前達のデートにはつきあわないからな」
「そんなこと言いながらついてきてくれるあなたが私は大好きよ」
義姉の白々しい言葉に思わずため息をついていた。ロクでもない事態には慣れている。慣れているが、だからと言って別に好き好んで巻き込まれたい訳ではない。
さて。ロクでもない事態は数多あるが、雪の降る夜に人里離れた山道で移動手段が壊れ、人里と連絡を取れなくなるというのはその中に数えられてしかるべきだろう。
「おっかしいな〜。新車なのに壊れるなんて」
ボンネットを開けて中をあれこれ点検しながら、義姉が唸る。彼女が直せないなら、この場にいる誰も直せないだろう。残念ながら機械関係は俺も管轄外だ。
「携帯が圏外だなんて……」
義妹――すずかが泣きそうな声で呟く。特別できる事もないが――それでも、気休めになればいいと頭を撫でてやる。
「というか忍。さっきから妙に手慣れているようだが、改造したんじゃないだろうな?」
確かまだ免許を取ってから――車を購入してから数週間程度のはずだ。今夜も慣らし運転につき合っているというのが本当のところだった。
「やっぱり部品がないとね〜」
恭也の問いかけを真正面から聞き流し、忍が大きな独り言を口にした。義姉は機械関係に滅法強い。だが、さすがに部品が
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