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迷子の果てに何を見る
第五十九話
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お嬢様か。すぐにお嬢様の元に向かう。

「どうかなされましたか」

「お茶のお代わりを」

「かしこまりました」

再びバックヤードに戻り沸かしていた湯をティーポットに注ぎ懐中時計を確認する。ふむ、7番テーブルのお嬢様のお時間か。お茶の方の時間を考えると丁度良いな。7番テーブルに向かいお嬢様に声をかける。

「お嬢様、そろそろお出かけの時間になります」

手を差し出すもそれが何なのかが分かっていないようだ。

「お手を拝借」

それで分かったのか僕の手を取ったので椅子から立ち上がらせる。そして、入り口まで誘導して扉を開く。

「いってらっしゃいませ、お嬢様」

お嬢様を送り出した後、すぐに先程の席の後片付けをする。カップや皿をキャスターに乗せクロスを新品に取り替え、椅子を定位置に戻す。バックヤードに戻り時計を確認するとちょうど良い時間になったので3番テーブルに向かう。

「お代わりをお持ちいたしました」

「ありがとう」

ちなみに3番テーブルのお嬢様は慣れている。というより生粋のお嬢様だ。一度だけ彼女の父親に影から護衛する依頼を受けた事がある。
それはともかくお気づきだろうか。実はこの教室内、僕一人しか居ないのだ。教室の外には料金を受け取るクラスメイトはいるし、急遽調理室にした倉庫にもレイフォン含め、数人が待機はしているが執事は僕一人なのだ。これが麻帆良祭中の担当をこの時間だけにする条件だったのだ。実際なら三、四人配置し、1人で二〜三人を担当するのだが現在は僕一人で八人を相手にしている。正確には席数だが、基本は女性一人だから間違いではないだろう。
この執事喫茶のシステムは一定時間を一定料金を取る事で収入としている。お茶やケーキ等は一定料金内に含まれている。ちなみに30分2000円で廻している。これで利益は殆ど出ない。なぜならお茶やケーキの材料の全てを高級品で揃えているからだ。父さんの知り合いから割安で仕入れているからこそなんとか黒字を維持している。
まあ、そんな感じで朝から一人で執事喫茶を廻している。午前中一杯はここにいることが確定しているが、朝一から満員状態が常に続いている。それでも行列ができるという事はない。時間は決まっているので予約の様な状態だからだ。



それから程なくして交代の人員がやってくる。

「お疲れ様です。では、後は私達が引き継ぎます」

目の前に居るのは誰だ?
いや、誰なのかは分かる。分かるんだが何だその喋り方と笑顔は。

「ええ、では後は任せますよ鋭太郎」

「はい」

「……」

「…………」

「………………」

「……………………」

「ちょっと、こっちに来てくれるかな」

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