暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
断章 「激動の朝」
[10/15]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
斬り上げる。
 当然、防がれる。が、そんなこと構うものか。
今度は莫耶を上から打ち下ろそうとして――。
「良い気になってるんじゃないわよっ!」
 シャナに贄殿遮那でつばぜり合っている干将ごと俺を押し飛ばされる。
 押し飛ばされ、たたらを踏む俺を目掛けて突進してくるシャナ。上段から振り降ろされる太刀を、タイミングを合わせて打ち返す。
 今度は横薙ぎ。大丈夫だ、防げる。
 剣術の師が優秀だったんだ。セイバーの為にも、ここで負けられないよな―――。


 暴風の如く、振り回される贄殿遮那を確実に1つ1つ確実に防ぐ。もう、何合斬り結んでいるのか分からない。
 結局、偉そうに『こっちの番だ』なんて言っておきながら、俺から仕掛けたのは最初の一撃のみ。
 情けない事この上無いが、ただ防戦一方だった訳でもない。こうして剣を交わすことで分かることもあるからな。
 師が優秀だったのか、シャナの剣術は非の打ち所のない程、完成された物だった。その全てが実戦的で、それこそ油断すればこっちが殺される程の物だ。
 シャナらしいと言えばシャナらしいのだが、真正面から叩き潰すスタイルの太刀筋は、まさしく強者のそれだ。大胆かつ繊細で一部の隙もない。
 剣術なんてものは、突き詰めれば如何に敵を殺すか。この一点に集約している。あの堂々たる剣筋は、セイバーのそれと同じ類いの物だ。
 そんな剣術を相手に俺が敵う筈がない。なにせ俺には剣の才がないからな。正面からぶつかって勝てる筈はなかろうよ。
 つまり、この攻防の果てに俺の勝利はない。残念だが、三手後に俺が生きているかどうかすら、俺には分からないからな。この一手を防ぎきり、二手目に備え、三手目は……死に物狂いだ。運にも左右されるが、ただ耐え凌ぐしかない。
 三手目を防げば、また振り出しだ。じり貧どころか、やられるのは時間の問題。タイトロープにすらなってない。
 とは言え、大人しく斬られる訳にもいかないし、今は打ち合いながら、反撃の機を伺う。それしかない。
「―――ッ!?」
 そんな事を考えながら、横薙ぎに干将を合わせる。が、これはマズイ。
 それなりの時間打ち合っているのに、全く剣撃の衰えない、化け物じみたシャナ。
 その何度目かも分からない横薙ぎだが、俺は遂にバランスを崩してしまった。
 内から外へと開いて行く身体。踏ん張ろうにも足場が悪い。左のガードが抉じ開けられるだけでなく、俺の身体は左に半歩程度押し飛ばされる。
 自分の意思とは関係なしに、あらぬ方向に跳ね跳ばされる左腕が、やけにスローに見えた。
 屋根の上という不安定な場所での交戦が故だが、俺はとうとう隙を作ってしまった。そう、致命的な隙が。
 俺が強引に肉薄してでも攻勢を得たかった理由は、この事態を避けたかったからだ。
 攻撃は最大の防
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ