”狩人”フリアグネ編
断章 「激動の朝」
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御とも言うが、攻勢に出ている内は、少々の隙を作っても大事にはなりにくい。
姿勢が崩れながらの攻撃であっても、相手の姿勢も崩してしまえば膠着状態になる上、先の攻勢の余勢により、また先手を打てる。
つまり、ずっと俺のターン状態、ってことだ。
筋力でも劣る。状況は劣勢。なかなかどうして、上手くいかないもんだよな。
姿勢が崩れた俺に、追い撃ちを掛けてくるシャナ。全く、ツメの甘さなんて全然ない奴だ。
「―――これで終わりよっ!」
最初から無理な話だったんだ。得物のリーチですら負けてる相手に勝てる筈がないものな。
だが、それはあくまでも正面から打ち合った時の話。
わざわざ負けると分かっている相手の土俵で、ハイそうですか、とやられるのは、俺の趣味じゃない。
端からは劣勢に次ぐ劣勢。俺の負けに見えるだろうが、そうじゃない。
―――何せ、俺はこの瞬間を待ってたんだ。
左に流される身体の勢いを、無理に殺そうとせずに、そのまま踏み込む。
「―――っ!」
踏み込みと同時に、莫耶を文字通り叩き込む。勿論、この間の俺の視線は跳ね跳ばされた左腕に向いている。
人間の視線ってのは怖いもんだ。相手が向いている方向をついつい追っちまうからな。
例え、フレイムヘイズだろうと、死徒もどきのゾンビだろうと、それは例外じゃない。
まさに一瞬、シャナの意識がコンマ数秒間、俺の左腕に向く。そう、この瞬間が欲しかったんだ。
「―――そっちかッ!!」
その数瞬の後、即座に莫耶を睨むシャナ。
なるほど、流石はフレイムヘイズだ。ゾンビとは違う。
尋常ならざる反応速度をもって、莫耶を迎撃される。
打ち込むどころか、逆に弾かれる右腕。衝撃を受け止めきれず、莫耶はそのまま俺の手を離れて跳ばされてしまった。
これで終わりだ、とこちらを睨むシャナ。しかし、即座にその視線は凍り付く。
莫耶を迎撃された勢いのまま、干将を叩き込む。そう、今度はさっきの逆回しだ。
良い反応だったよ――、シャナ。だけどな、右も囮だったんだ。
一手目は、姿勢を崩したフリをして攻撃の誘い込み。だが、実はそれは囮で、意識の外側からの二手目。つまりは、莫耶による奇襲。
見事に莫耶を迎撃されたが、この右も囮。本命は三手目の左だ。
そう、この剣撃において俺が初めて見せる、予定調和の三手目。運でもなければ、死に物狂いの迎撃でもない。正真正銘の詰め手だ。
「これで――、終わりだ」
しかし、干将を叩き込もうとして、重大なことに気付いた。
―――これは、殺し合いじゃない。
何が『これで終わりだ』だ。バカか俺は! シャナを殺しにかかってどうする!
とにかく、このまま干将を振り切る訳にはいかない。なんとかしないと!
必死に止めようとする
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