暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 9
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すべてから、彼を護りたかった。



 それからも旅は続く。
 ある時は、とある王国の転覆(てんぷく)を企む悪魔に突然強襲され、返り討ちに。
 またある時は、神の力によって時間の流れを緩やかにされてた枯れかけの世界樹周辺に私が結界を張り、アルフリードが祝福を分けて再生を(うなが)した。

 この頃だったわね。
 時々、奇妙な視線を感じていたのは。

 襲ってくるでもなく、関わろうとしてくるでもなく。
 遠くから黙って様子を見ているだけの、真意が読めない気配と視線。
 なんなのかしら? と、視線の主が居る辺りを『空間』の力で探って。
 見つけたのは、真っ黒な短髪と褐色の肌と紅い虹彩を持つ男悪魔。

 いつしか、空間越しに何度か視線が重なるようになって。
 そのたびに面白くなそうな顔をして、どこかへ跳んで消えてしまう。
 そんな彼の話をアルフリードにしたら。
 アルフリードは悲しそうに、ちょっとだけ嬉しそうに、笑っていた。

「良いんだ。あいつは本当に、ただ見てるだけだから。放っといて大丈夫」
「なんだ? あの悪魔、また来てたのか。いっそ一緒に来ればいいのにな」
「あいつは来ないよ。そういう奴だ」

 私が仲間に加わる前からの、わけありな知り合い?
 と、首を傾げてから思い出したのは、神殿で聞いたアルフリードの言葉。
 親友を裏切ったと言っていた、あの時と同じ表情を見せたアルフリード。

 もしかして、彼が?
 そう思い至った頃にはもう、現れなくなっていた。



 貴方を恨んでいるわけでも、責めるつもりでもないけれど。
 もしもこの頃に、貴方とアルフリードが直接言葉を交わしていれば。
 あるいは、私達と行動を共にする機会があれば。
 アルフリードの未来は変わっていたかも知れないわ。

 ねえ、ベゼドラ……



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