暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 9
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 「アホリード」は、弱い彼に与えられた、二人なりの激励と抱擁の愛称だったんだ。
 「……はい。護ってください。貴方の世界を」
 私はさすがにアホリードとは呼べなかったけど、傍で支えになれればと思った。
 この人を悲しませてはいけない。隣に立って、傷付けるもの全てから彼を護りたかった。


 それからも旅は続く。
 ある時は、とある王国の転覆を企む悪魔に突然強襲され。
 またある時は、神によって時間の流れを緩やかにされていた枯れかけの世界樹周辺に私が結界を張って、アルフリードが祝福を分け与え、再生を促したりした。
 この頃だったわね。時々、奇妙な視線を感じていたのは。
 襲って来るでもなく、関わろうとするでもなく。ただ様子を見てるだけの気配と視線。
 なんなのかしらと空間を探って見付けたのは、全身真っ黒で紅い虹彩を持つ男悪魔。
 何度か目が合うようになって、その度につまらなそうな顔で何処かへ跳んで消える彼の話をアルフリードにしたら、悲しそうに……ちょっとだけ嬉しそうに笑ってた。
 「良いんだ。あいつは本当にただ見てるだけだから、放っといて大丈夫」
 「なんだ? あの悪魔、また来てたのか。いっそ一緒に来れば良いのにな」
 「あいつは来ないよ。そういう奴だ」
 私が仲間に加わる前からの訳ありな知り合い? と、首を傾げてから唐突に思い出したのは、神殿で聞いたアルフリードの言葉。
 親友を裏切ったと言ってた、あの時と同じ表情をしてるアルフリード。
 もしかして彼が……と思い至った頃にはもう、現れなくなってた。

 恨んでる訳でも、貴方を責めるつもりでもないけど……もし、この頃に貴方と直接言葉を交わしていれば。或いは行動を共にする機会があれば。アルフリードの未来は変わっていたかも知れないわ。

 ねぇ、ベゼドラ……。


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