解かれる結び目 9
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なんだ。
拠り所が無い旅へ、たった一人で送り出された、幼い少年。
覚悟があったって、怖くない筈がない。
寂しくないわけ、ないじゃない。
私が神殿で神々に護られ、人間達に愛されてぬくぬくと育っている間に。
この人は、どれだけの傷を負ってきたの?
それをずっと、こんな風に隠してきたの?
……一人で、泣いてきたの……?
「私を……私を護ってください、アルフ」
アルフリードの前に立って、地面に両膝を突き。
木陰にあってなお陽光のように眩しい金色の頭を、そっと胸に抱える。
私はこの時、他に言葉を見つけられなかった。
本当は言葉なんて要らなかったのかも知れない。
でも、何かを言わずにはいられなかった。
初めて見る世界で。
初めて見るアルフリードの弱い姿が、怖いくらいに頼りなくて。
そよ風に揺れる灯火よりも儚く見えて。今にも消えてしまいそうで。
だから、繋ぎ留めておきたかった。
私が繋ぎ留めたらどうなるか、なんて、深く考えもせずに。
「私が貴方の帰る場所になります。だから、貴方が笑っていられるように。貴方が迷わず帰ってこられるように。私を護ってください、アルフリード」
この人を護りたい。
笑顔一つで自分の世界を護ろうとしている、強くて弱いこの人を。
護りたい。
護りたいと、強く思った。
「……なんか、求愛されてるみたい」
「! ち、違います! そんなつもりは……っ!!」
慌てて離れる私の手を取り。
甲に唇を軽く押し当てた彼はもう、いつものアルフリードだった。
いつの間に拭ったのか、頬を伝い落ちた涙の筋は消えて。
赤みを帯びた橙色の目を緩く細めて、彼は微笑んだ。
「護るよ。俺が触れた物、心。俺の手が届く限りの、すべてを。……君も。必ず護り抜くと、神々に誓おう」
実直で。愚直で。
自分にも他人にも厳しくて、優しい人。
きっと、どこの誰よりも強い人。
だけど、指先で簡単に割れてしまう薄ら氷のような脆さを隠してる。
その危うさに気付いたから、コーネリア達も彼を放っておけなかった。
『アホリード』は、弱い彼に与えられた、二人なりの激励と抱擁の意味を込めた愛称だったんだ。
「はい。護ってください。貴方の世界を」
私はさすがにアホリードとは呼べなかったけど。
アルフリードの傍で、彼の支えになれればと思った。
これ以上、この人を悲しませてはいけない。苦しませてはいけない。
彼の隣に立って、彼を傷付けるもの
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