解かれる結び目 9
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もと変わらない。
本当に、神殿で出会った時と何一つ変わらない笑顔と仕草で。
「え? あ! マリア、ちょっと待っ」
「いい、ウェルス。行かせてやれ」
アルフリードは笑顔が良いと言っていた。
いつだって、どんな時だって、笑ってるほうが良いと。
だけど、こんな時にまで朗らかに、爽やかに笑うの?
命が失われた瞬間にまで笑って、死んだら廃棄物のように扱うの!?
そんなのってない!!
おかしいわよ!!
私はアルフリードへの気持ち悪さと怒りを胸に抱えて、彼を追いかけた。
吐き気で目の前が不自然に揺れていたけど。
そんなことはもう、どうでもよくて。
ただ、彼に面と向かって言いたかった。
貴方はおかしい、狂っている、と。
「アルフリード!」
私に背を向けて立っていた彼は、声に驚いて振り返り。
私の姿を認めた瞬間、ふにゃりと気が抜ける笑顔を浮かべ。
「…………あーあ。所用だって、言ったのに」
一粒だけ。
頬に雫を伝わせた。
「アル、フ?」
「本当にしてたらどうするんだよ。恥ずかしいじゃないか」
彼の横に生えていた木の幹へ、ズルズルと。
背中をこすりつけながら、地面に座り込む。
そんなアルフリードの姿に、いつもと同じものは、無かった。
「これ扱いが気になった? ごめん。酷いとは思うんだけど割り切らないと頭がついていかないからさ。世界中で、普通にあるんだよ、こういうコト。マリアはまだ知らないだろうし……知らない人間は、知らないままでいても良いと思うんだ。そういう場所もあるんだって……、それはそれで良いっていうか……、俺にとっては、それが救いになってる、っていうか……」
アルフリードは片足を伸ばして、もう片方の足を胸に寄せて抱える。
正面を遠く見つめる目から、また一粒、透明に光る雫が零れ落ちた。
「……マリアさ、神殿で尋いただろ? どうして笑っていられるのかって。俺はね、あの時ちょっとびっくりして……嬉しかったんだ。ああ……俺は、まだ笑ってるんだなって。笑ってるように見えてるんだなって」
「…………」
「笑っていたいし、笑っていて欲しいじゃないか。そうじゃなきゃさ……、護りたいものとか……、帰りたい場所とかが……わからなく、なるんだよ。見失う……から……」
底抜けに明るい、太陽みたいな勇者アルフリード。
どんなに痛くて苦しくて辛い目に遭っても、いつだって笑顔で。
魔王討伐の対価でさえ、皆に笑顔を要求した、おかしな人。
だけど。
「……マリア?」
子供だ。
まだ、十代の子供
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