解かれる結び目 8
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動前から少しも変わってなかった。
「お疲れ様!」
迎えてくれた笑顔は明るいもので。
正面から頭を撫でられてようやく、やり遂げたんだと自覚する。
き……、緊張した……っ!
これが正しい選択かどうかは分からない。
ただ、私にとっても神殿は特別な場所だもの。
嫌なことも数え切れないくらいあったけど。
喜びも嬉しさもたくさん詰まってる。
無残に廃れて欲しいとは思わない。
「あの人達が気付く前に、早く出ていこうか。大々的に表明した後で女神がのんびり歩いていくのは格好がつかないからね。裏門を使うとか……、と」
ホリードさんが率先して動こうと足を持ち上げかけ。
私の肩を、とんとん、と軽く叩いた。
なに?
「マリア」
「! ……エルンスト」
背後から自分を見つめていた青い目に振り返る。
騎士達と一緒に飛び出さなかったのね。
エルンストが立つ位置も、やっぱり全然変わってない。
少しの沈黙の後。
不意に、微笑んでくれた。
昔と変わらない、友達の顔で。
「気を付けて。行ってらっしゃい、マリア」
ブローチには、触れない。
…………そっか。
「行ってきます。元気でね、エルンスト」
いっぱい迷惑を掛けてごめんなさい。
振り回してごめんなさい。
すぐに戻ってくるのは無理だと思う。
だから、旅の最中にも、貴方の幸せを一番に祈っているわ、エルンスト。
今までありがとう。
大好きよ。
私の、たった一人の友達。
「急いで荷物を持ってこないと。マリアはそのまま行くつもり?」
「ええ。私の持ち物なんて、これだけだもの。これだけがあれば良いわ」
真っ白な法衣を飾っている、銀製のブローチに右手を添えて。
ホリードさん達に晴れ晴れと微笑む。
三人も、私に優しく微笑み返してくれた。
「マリア様――っ!」
正面入り口のほうから、足音がバラバラと迫ってくるのを感じる。
ここで姿を見られても厄介なのよね。
静かに佇むエルンストをその場に残し。
三人が泊まっていた客室へと、荷物を取りに走る。
見張りが一人も居なくて助かった。
「ホリードさん、コーネリアさん、ウェルスさん」
荷物を手に取って客室を出ようとする三人を呼び止め、両手を差し出す。
さっきの感じだと、多分できる、筈。
「私の手を掴んでください」
「? こう?」
コーネリアさんが、右手首を。
「手首と言わず、なんなら全身を」
「浮気。即。滅殺。」
「ごめんなさい」
コーネリアさんに鋭い目つきで睨まれ顔面蒼白になったウェルスさんが、左手首を。
「よろしくお願いします
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