暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 8
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ってるんだ。
 すごい。
 歌声は聴こえないけど、体全体で空気の振動を感じる。
 ホリードさんとウェルスさんも。
 耳栓をして、その上を手で塞いでいるのに、物凄く辛そう。
 いったい、どんな声量をしてるの?

 直に聴いてみたい気はするけど、今はそれどころじゃない。
 コーネリアさんが騎士達の足を止めてくれてる間に、外へ出なきゃ!

「……! …………!!」

 苦しそうな表情で耳を押さえつつ、唇をぱくぱくと動かしてる大神官を一瞥(いちべつ)し、生まれて初めて……翔ぶ。

 予想以上に羽ばたきが強くて、天井に頭をぶつけるかと思った。
 床から見上げていた時は高すぎると思ってたくらいなのに。
 翼で翔ぶとあっさり届いてしまうのね。

 正面入り口に降り立って扉を開けようと思ったけど。
 私はこれから、女神として人前に出なきゃいけない。
 人間みたく普通に姿を現したのでは、威厳と言葉の説得力に関わる。
 もっと別の形にしないと。
 だけど、どうやって……

『巧く使えば瞬間移動とかもできるんじゃない?』

 ……瞬間移動、か。
 私がいきなり空中に現れたら、誰でも驚くわよね。
 印象付けには効果的かも知れない。
 できるかしら?

 正門の外に訪れている人達が気付ける位置で。
 コーネリアさんの歌から解放された騎士達がすぐに駆けつけられる場所。
 神殿の正面入り口から正門の間の、ちょうど中間辺りを想像する。
 その場所に自分を繋ぐ感覚で、目を閉じて……

 肌に触れる空気が質を変えた。
 目蓋を開くと同時に、音を遮断していた空間も消し去る。

「……マリア、さま?」
「と……飛んでる……!?」

 翼を広げて宙に浮かぶ私の姿を見留めた人達が戸惑い、ざわめく。

 本当に瞬間移動ができてしまうなんて。
 神々が制限するわけだわ。
 こんな力、野放しにしておいたら、悪用されても仕方がない。
 応用次第では万能に近くなってしまう。
 もしも何かのきっかけで悪魔に利用されていたら……背筋がゾッとする。

「マリア様!」

 背後から、大神官が騎士達を引き連れて礼拝堂を飛び出してきた気配。
 何事かと、敷地の外に居る人達が閉ざされた門扉の隙間から首を伸ばして敷地内を覗き込んでる。

 注目されるのって好きじゃないし。
 すがる声にも目にも、あんなに怯えていたのにね。

 ……ううん。
 今も怖い。
 怖いよ。
 一言でも、一素振りでも失敗したらと思うと、すごく怖い。

 だからって、退くに退けないでしょ、もう。

「神々に祈りを捧げる者達よ」

 神殿を囲む木々の先端ほどの高さで、翼を全開にしたまま空中に留まる。
 目線の先には、正門を
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