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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第二十二話
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モザイク画のように不明瞭なものに変わりつつある中、その本人はアイズの目を見つめながら言った。

「私の知り合いに今のアイズに似てる人がいたんだ。その人はそのせいでたくさん後悔してきたって、犯してはならない過ちを犯したって言ってた。だから君にはそうなってほしくないと思って言ったんだ」

 そう言うとレイナは石突を杖代わりに未だ疲れが溜まってる体を支えて立った。

「今日で密会は終わりだね。これからしばらく遠征で帰ってこれないんでしょ?」
「え、うん……」
()()()()の六十階層に行くんだっけ。私のもう一人の知り合いも遠征に付いていくようだから、よろしくね」

 今日は一人で帰れそうだから、とアイズが伸ばしかけた手を言葉で制し、おやすみと挨拶し魔灯石の明りが溶け込む暗闇に消えていった。
 行く当てを失った手がふと下ろされ、何気なく天を突くバベルを見上げる。

 神はダンジョンはダンジョンだと言った。神はモンスターはモンスターだと言った。レヴィスの一件で露骨になった通り、ダンジョンには何か秘められており、モンスターは人間と混じることが可能だった。
 全知全能の神がそのことを知らないはずがない。それら含めてダンジョンだと言い、モンスターだと言ったのか。それとも、神たちすら予期せぬ何かが足元に広がる巨大な魔窟で始まろうとしているのか。

「……」

 レイナという不思議な少女との邂逅。それも何かの契機なのだろうか。
 今まで当たり前だと思っていた前提を崩された気分で、まともな思考が出来ていないような気がする。でも、今自分が進むべき道に陰りが差していると漠然ながらも感じた。

 少女の小さな背中を飲み込んだ暗闇を一瞥した後、言い表せぬ不安を胸に抱きながら本拠地(ホーム)へ小走りで帰った。

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