第二十二話
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「……今日の特訓の時間も終わっちゃったね」
わずかに汗ばみ額に張り付いた前髪を払ったアイズは、少し残念そうな声音で呟いた。愛剣の鞘を握るその手にろくな力が入らず、さっさと刀身を収めて腰に佩く。
「そう、だね……ハァ、私としては、助かる、けど、ハァ」
対するレイナは疲労困憊の様子で汗と埃まみれになった姿を気にも留めず、そのまま床に腰を下ろした。疲れていても右手に持つ銀槍は丁寧に地に置き、今日の働きを労わる。
アイズがレイナに戦闘訓練を依頼してから期日を迎えた。が、結局アイズは一度もレイナから勝利をもぎ取ることはできなかった。訓練する時間が深夜ということもあり一日に一時間ほどしか──これでも十分長時間だが──手合わせ出来なかったことが大きかったかもしれないが、それでも最終的にはLv.3ほどの出力で戦い続けていたしアイズも持ちえる技術を余さず発揮していた。それでも一度すらレイナの間合いを破ることが叶わなかったのは、レイナの実力が超絶的だったという証拠だった。
まあ、アイズのあずかり知らぬことだがレイナはクレア・パールスの宿し身だ。己の生涯すべてを冒険に、そして己の主神に捧げてきた者だ。並々ならぬ覚悟で一生涯研ぎ澄ましてきた技術と知恵に対して、いくら天才少女であるアイズでも四日だけで覆せる道理はなかった。
しかし、アイズは許された時間の中でレイナを越えられるとは思っていなかった。厳密に言えば訓練を始めて二日目で悟った。
──何か、今の私じゃ到底届かない場所にいる気がする──
いまだ18歳という若さでLv.6に導いた彼女の鋭すぎる才覚は漠然とではあるが、確かにレイナの秘めたる事情を嗅ぎ取っていた。本人に自覚は無いが、どちらにせよ、当初の目的であった『レイナの腕を知る』から『レイナの技術を盗む』へ変更したのだ。
もちろん毎度の手合わせには力の制限が掛かっていたものの勝つ気で臨んだ。しかしあくまで自分に足りないものをレイナから学び習得することを前提に臨んでいたのだ。
それによりアイズの身に明確な変化が訪れていた。なんとLv.5に入って以来ずっと伸び悩んでいたステイタスが目に見えて伸びたのである。高レベルなので1か2くらいしか変動しないものが平均3ほど伸びたのだ。
これには主神ロキも驚きを隠せず「なんやアイズたん、また黙って深層へ潜ったりしとんの?」と疑ったほどだ。今まで最前線に身を置いていてようやく得ていた経験値なのに、たった数日で見違えるほど伸び始めたのだ。そういう疑いを掛けるのも無理のない話だ。
その報を受けたアイズは秘密の特訓が原因だとすぐに気づき、このときばかりは人形と呼ばれてきた鉄化面に感謝しつつしらばくれた。神の前では人のつく嘘程度簡単に見通せるが今回ばかりは本
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