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SNOW ROSE
間章 I
枯れ葉舞う頃に
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げな横顔を見つめていた。
 晩秋のやけに紅い夕日が、エリスの年輪を重ねた顔を照らし、深い陰影を作り出している。
「ねぇ、エリスさん。まだ戦が終って間もないわ。その甥の方だって絶対に感謝するはずだわ。家を持てるなんて、今の時代には夢のようなものだもの。」
 エフィーリアは何とは無しに思ったことを言ったが、エリスは苦笑いをして首を横に振った。
「あ、私のことはエリスで構わないよ。…でもねぇ…上辺だけじゃ意味はないのよ…エフィーリアさん。若い者にとっちゃ財産が入るにせよ、こんな年寄りの世話なんてしたくないものでしょ?私はね、お荷物になんてなりたくはないの。家を譲るって言ったって、所詮は私の面倒みてよね…ってことだし、何か強制してるみたいでねぇ…。どうしても気が引けてしまうのよ…。」
 そう言ってエリスは深い溜め息を吐いたのであった。
「大丈夫よ!エリスはそうやって人のことを考えられるんだもの。絶対楽しい日々を送れるわ。私が保障しちゃう!」
 エフィーリアは目配せし、沈んでいるエリスにそう言い放ったのであった。
「それと、私のことはエフィーでいいわよ。でも…何で今まで一人きりだったの?」
 この時代、女性が一人で暮らすことなど考えられなかった。それをするということは、生半可な思いでは通せないのである。
 たとえ結婚したとしても、夫が亡くなれば大概は家を追われたからである。
 時の法によれば、子供は夫の所有物であり逆らうことは許されなかった。また夫の死後は、三十歳にならぬ女性は速やかに家を去ることが義務付けられていた。
 要は…女を再び結婚させ、子供を産ませるためである。戦の続いた時代であり、極端に人口が減少していたのだ。
 時代がそうさせていたと言っても、決して過言ではなかろう。膿んだ時代の妄想なのかも知れぬ。

 だがエリスは、そんな時代を撥ね除けて生きてきたのだ。余程の才覚と強靱な精神の持ち主なのだろう。
「そうねぇ…。心から愛した方が死んでしまったからかしらね…。その知らせを受けた時にね、結婚はしないって、そう決めたのよ…。」
 遠い過去の日々を思い出すかのように、エリスは瞳を閉じた。
「あの人を本当に愛していたわ。今でもはっきり思い出せる。透るようなあの碧い瞳、私の名を呼ぶあの人の声…。もう遥か彼方のお噺ね…。やぁね、こんな話し…。」
 エリスはエフィーリアの顔を見て、照れたように微笑んだ。その微笑みは妙に子供っぽく、エフィーリアもつられて微笑んだのであった。

 そんな晩秋の夕暮れの中、エフィーリアは微笑みながらこう言ったのだ。
「エリス、きっとその人に逢えるわよ。」
 言われたエリスはキョトンとし、訝しげにエフィーリアを見た。
「エフィ、それはありえないお話しよ?もう当の昔に亡くなってるんですもの。聞いてな
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